第15話 変態部

 今日は大学の入学式の新入生歓迎祭、部活やサークルを選ぶ日だ。そこで今日はいろいろな部活を見に行く。サッカー部、硬式野球部、将棋部、多種多様な部活がある中、一つだけ、異彩を放つ部活があった。


 通称変態部、それを見た瞬間俺の足は止まった。いや、止まるのは当たり前と言えよう。なぜ変態部なんて意味が分からない部活が認可されているのか、俺には全く分からない。

 こんな部活、入っているというだけで周りの人に奇異な目で見られそうだ。

 こんな場所さっさと離れて、他の場所に向かったほうがいい。普通そう思うだろう。


 ただ、俺の好奇心はそれを許さなかった。

 この部活のことを知りたい。そう思って、ブースにいた先輩に声をかけた。


「すみません。ここってどんな部活なんですか?」


 そう言った瞬間、俺まで周りの人から不思議な目で見られた。……だって気になるものは仕方ないじゃん。


「ここは所謂変態部です。個々の活動内容は、一見は百聞に如かずだと思います。では行きましょう」


 そう言われて部室へと連れられた。そして周りの人たちはそんな俺を見ながらひそひそ話をしていた。うるせえ! 俺を巻き込むな。


 そして部室に入った最初の感想は、所謂地獄だと言ったものだった。まず、両手両足を拘束されて、むち打ちを受けている変態や、拘束イスに座らされて、電気ショックを受けている変態、そして、ベッドに寝ながらくすぐりを受けている変態。それを見て子の部活がまともだと思えるような人はいないだろう。

 早速ここに来たことを後悔しかけてきた。


「やあ!」


 その中で、むち打ちを受けている変態が話しかけてきた。


「この部活に興味があるなら、君も私を鞭打ちしてもいいわよ」

「……なんで!?」


 なぜ鞭打ちされたいのだろうか。全くその気持ちが分からない。


「ああ、申し遅れたわね。私の名前は白川敏花。副部長だ。子の部活はいいぞ。人が普段から内に秘めている欲望を解放してくれる。そう、誰かをいじめたいという欲望や、束縛されたいという欲望、そして誰かにいじめられたいという欲望。それを解放出来る場所がここなの!!!」


 なるほど、今まさに興奮した顔で拷問されている人が言うと、説得力があるな。


「だからさ、ここであなたも楽しんでみない?」

「……」


 どうしよう。帰りたい。ただ、それ以上にここで、いじめてみたいという気持ちもある。


「いいよ。私をいじめても」

「分かった」


 そう言って、俺はとりあえず白石先輩の顔をぶった。


「いいよお、その感じ。いいビンタだああ」


 うん。変態。


「君いじめるセンスあるよ。変態のセンスあるよ」

「それは先輩じゃないっすか」

「そうね、私達は皆変態よ」


 変態部と書いてあるのは分かっているが、ここの部員たちも変態を自認しているのか。やはり俺はとんでもない部活に足を踏み入れてしまったのか。

 ただ、驚愕はしていても、後悔はしていない。俺にもドエスの才能があるらしい。同様にドエムの感情も。ここでいじめたい、いじめられたい。その感情が俺の中に渦巻いた。

 先ほど白石先輩をぶった時俺の中で新たな感情が生まれた。

 それから数発鞭で先輩をぶった後、俺は


「拘束させてもらってもいいですか?」


 と、口に出した。自分でも何を言っているのかは分かる。とんでもないことを言っている言うことも分かる。だが、それは半分本能から出た言葉だ。


「分かった」


 すぐにそう言われて、俺の手は拘束具で縛られた。それだけで興奮してきた。手を動かそうとしても自由に動かせない、今俺は何をされても抵抗が出来ない。まるでエロ漫画みたいなことを言っているとは思う。だが、今の心情がそうなのだから嘘ではない。


 そして、俺は俺自身の頼みにより、その場に放置となった。俺が燃える展開それは放置だ。

 放置され、拘束されたまま暇な時間を過ごす。それが今の最高の体験だ。そしてその暇時間は長時間にわたる。二時間も、三時間も放置され、絶望の気分を味わう。だが、それでこそ至福の時間だ。


 絶望しながら興奮を味わう。一見矛盾している行為なのだが、これが楽しく手仕方がない。

 そして数時間後、拘束は外された。安堵感と、これで終わりという絶望感だ。

 今までの俺を肯定するような感覚だ。俺の幸せはここにあったんだな。


 そして翌日、俺は入部届けを出した。もちろんこのへんてこな部活にだ。だが、俺もへんてこなのだから、恥などない。俺は大学生活中ここで生活するのだ。そう思うとわくわくが止まらなくなったいた。

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