第10話 旅立ちの誕生日

 お母さんへ、今まで育ててくれてありがとう。


 私は何点か謝らなくてはならないことがあります。私が小学生の時、財布からお金が減っていたのは私のせいです。私がスイミングスクールを時々忘れていたというのも嘘です。


 それと私は時々おじさんを仮想入院させて学校をサボっていました、そのことも謝りたいのです。ここまで話したことは大したことはありません、あなたにとっては大事なことかもしれませんが、今の私には関係がありません。


 私はあなたを置いて先に旅立ちます。心苦しいですが、旅立たかなくてはいけません。どうかあなたを1人で置いていく私を許してください、大してお金を残さないまま旅立つ私を許してください。本音を言えば私は旅立ちたくありません。

 もっとお母さんに甘えていたいです。このまま時計が動かないで欲しいです。しかしそれはもはや無理なのです。


 私の余命はもう三ヶ月無いと言われています。私はもう自分の誕生日を祝ってもらうこともできないのです。


 こんな親不孝者からお願いがあります、私にあって誕生日を祝ってくれませんか? 私とあなたはもう七年会っていません。私が家出をしたのが悪いと言われたら何も言い返すことができないのですが、誕生日を祝いに来てくれませんか、私はもう誕生日は迎えられませんが、仮の誕生日を作って祝ってくれませんか? 私はずっと素直になれませんでした。素直になれていたらこんなにも家出が長引くこともなかったでしょう、その中で誕生日を迎えるたびに胸が痛むのです。今年も誕生日お母さんに祝ってもらえなかったなと。だからこの親不孝者を祝ってください、お願いします。


 追記 私は死にたくはありません。


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