第6話 世にも恐ろしき人物
「グアア」
魔王が断末魔を叫ぶ。
その声によると俺たちは魔王を倒したみたいだ。
「勇者め、我が倒れても次の魔王が必ず現れる、覚悟しておけ」
そう言って魔王は生き絶えた。
「ふはははははは」
勇者は悪そうな顔で言った。
「まさかマクリスお前魔王になったのか?」
「いや言ってみただけ」
「なんやねん」
そう戦士であるドリスが突っ込む。
「わりい、わりい、シリアスやったからお笑いも必要かなって」
「どういうお笑いよ、それ」
そう魔法使いであるマリィがあきれた様子で言う。
「ところでこの音なんですか?」
そう賢者であるルビィが言う。ルビィが言うように周りでちくたくちくたくと不思議な音がする。
「確かに音がするな、この音は何だろう」
「マリクス、お前もわからないのか?」
「ああ」
「ごきげんよう勇者たちよ、魔王の討伐おめでとう、そこで諸君らにプレゼントだ、ここにある爆弾は残り10分で爆発する、さあさあ逃げたまえ」
そう魔王の声でアナウンスされる、魔王は自分が倒された時のために爆弾を設置していたのである。
「ふざけるなよー魔王たった十分で逃げられるわけないだろ、なあドリスお前もそう思うだろ」
「いやまず逃げようぜ」
「ああ」
「きゃあ」
「どうしたんだマリィ」
「足くじいちゃった、おんぶしてくれない?」
と、マリィは泣きそうな顔で言う。
「ドリス、マリィは置いて逃げよう」
「何言っているんだマクリス、俺たちはずっと一緒に魔王を倒すために闘ってきた仲間じゃないか」
「いや、お前こそ何言っているんだ、足をくじいたのはマリイの責任だろ、俺には何も関係ない、行くぞ、時間がねえ」
「おいマクリスおい!」
ドリスは必死に叫ぶがマクリスの耳には届かない。
「仕方ない私たち二人で協力してマリィを運ぼう」
「そうだな」
「ありがとうルビィとドリス」
「ありがとうじゃないよ、私たちは仲間なんだから」
「うん」
どがんと言う音がして……
魔王城は爆発した。
「ふーあいつらは情に流されて死んだか、いい奴らだったが、失う選択ができない人は弱いな」
そういってマクリスは城を後にする。
「国王陛下、勇者が戻ってきました」
「そうか、通せ」
「国王陛下、魔王を倒し戻ってまいりました」
「そうか、で、ほかの仲間は?」
「全員殉職しました」
と勇者は悲しそうな顔をする。本当は悲しくもないのだが。
「そうか」
「ところで、魔王を倒したらなんでもご褒美をもらえるという話でしたよね」
出発の前に王様とそう約束していたのだ。
「ああ、そうだ、なんでも言え」
「ならこの世界が欲しいです」
と、邪悪な顔をして言う。
「何を言っているんだ君は、そんなものあげられるわけないだろ」
「なんでもって言いましたよね、約束が違うじゃないですか」
「常識的に考えての話だ」
「国王陛下?」
「なんだ?」
「俺言われたんですよ、魔王に、我が倒れても必ず次の魔王が現れると」
「それがお前という話なのか?」
「まだそうだとは言ってないじゃないですか、ただ、今の流れだとそうなる可能性はありますけど」
「わかった、くれてやる、第七代国王はお前だ」
「ありがとうございます」
「よいのですか、国王陛下」
「世界の平和のためならやむを得ん」
数日後
「えーこれから俺の悪口を言った人は死刑、取れた穀物のうち7割国に納めること、それから」
恐怖政治が始まった、人々は思った、魔王がいた時のほうが良かったと。
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