第3話 レイズパーファクト
レイズパーファクト。彼女はレドミンギルドに五人しかいないSランク冒険者だ。
彼女は噂では伝説の邪竜レッサードラゴンや、魔王軍幹部ラミルークなどの討伐を果たしている。だが、それを信じているようなものはいない。彼女は普段ぐうたらだからだ。どうぐうたらなのかと言えば、常にギルドで真昼間から酒を飲んで暮らしている。何の依頼もこなさずに。
「レイズ、そろそろ働きなさい」
そう彼女の父親のハールスパーファクトが言う。彼はこのギルドのギルドマスターであり、現役時代はSランク冒険者だった。
「うるせえんだよ。なんで私がこんなぐだらねえ依頼をこなさなきゃならないんだよ。私は酒を飲みたいだけなんだよ!! くそ爺」
そう言ってレイズはごくごくと酒を飲んでいく。それを見てハールスはため息をつく。
「私は強いんだからさ、私の好きにさせろよ」
そう、ハールスに対してにらみつける。もし私に口答えしたら許さないぞと言った感じで。それを受けてハールスはおとなしく引き下がった。彼もまた強いとはいえ、流石にレイズに勝てるほどではない。
「また酒飲んでんのか、レイズ」
そう、ギルドのB級冒険者のラニアが言う。レイズの数少ない友達の一人だ。
「悪いかよ」
「いや悪くないさ。でも、わたしみたいにきちんと働けよ」
「働けって言われたって私S級だぞ。働かなくてもお金があるからいいんだよ」
「あ、S級の余裕か?」
「もちろん」
「でもたまには依頼受けたらどう? 酒飲んでばっかりだと体に悪いよ」
「私は魔力でコントロールしてるからいいんだよ」
そう言って再びレイズは酒を飲む。ごくごくと。実際彼女が言う通り、魔力によってアルコールを分解しているので、体には毒にならない。
そんな時。
「すみません、すみません。ペットが迷子になって。俺どうしたらいいのかわからなくて」
そう、ギルドの受付に八歳くらいの男の子が来た。その声に気づき、レイズはふと見る。
「じゃあ、ここに書いてください」
「はい。お願いします」
そう男の子が簡単な手続きをして、出ていこうとするとき、
「待った。ごぞう」
そう、少年にレイズが声かけた。
「何ですか?」
「その依頼、お姉ちゃんが受けてやろう」
そうレイズが言った。その言葉を聞いて、ラニアたちが驚く。
「何を驚いてるんだよ。ラニア。私がやったらだめなのか?」
「いや、そうじゃないけど」
「そういう事だ。お前のペット。お姉ちゃんがしっかりと探してくるぜ」
そう言って、レイズは持っていた酒瓶をギルドにおいて探しに行く。
「それで、どうやって探すんですか?」
「そりゃあ決まってるだろ。魔法でだ。とりあえず、お前のペットの物をくれ」
「これでいいですか?」
そう少年は、ペットの首輪を差し出した。
「これか。よし!」
そう言ってレイズは魔法を使う。すると、足跡のようなものがレイズに見えだした。
レイズはそれを追って歩いていく。
その足跡は長い距離続いていた。それを必死に二人は追う。
「こりゃあ参ったなあ」
あるところまで来た時に、レイズはそう呟いた。町の外に足跡があったのだ。町の外、そこは魔物達の巣窟、近いところならいいが、遠いところだと、もう命がない可能性も。
「ごぞう。もう危ないからここで待ってろ」
「お姉ちゃんは?」
「私はちゃんとお前のペットを見つけてくる」
そしてレイズはどんどんと進んでいく。その足跡の向く先に。
(……ここは……)
そこにあったのは洞穴だ。到底ペットが飼い主の元を離れて一人で行くような場所には思えない。ということはつまり、誰か見知らぬ人の何かが絡んでいる。
「はあ、面倒くせえなあ」
そう言って、レイズは中に入っていく。
穴の中は暗く、レイズはすぐさま魔法で灯りをともした。そして先へ先へ、より深い場所まで進んでいく。 すると、ようやく広い場所に出た。
「なあ。お前の魔法最高だよ。特定の生物を引き寄せる魔法なんてよ。これで俺たちは大金持ちだ」
その声をレイズは陰に隠れながら聴く。
「そうだ、感謝しな。こんな大魔法を使えるのは俺だけだ。とはいえ、マーキングする必要はあるがなあ」
「それでもすげえぜ、こんなにも大量のペットをよお」
(人のペットをこんな……なんて卑劣な)
「そろそろずらがるかあ?」
「いや、もう少しマーキングを付けたペットがいるんだ。それの到着まで纏う」
「オッケー。わかったぜ。とりあえず侵入者がいないか見てくる」
そう言って男は入口の方へ、レイズの方へと歩みを進める。それを……
「ブレイズファイヤー!!」
レイズは焼き払った。男は死んではいない、だが、体の皮膚が火傷により剥がれ、その場にうずくまってしまった。
「痛ってええよ。何しやがるんだあ」
男は回復魔法をかけ、自分の体を回復させ、レイズの方へと魔法のオーラを纏ったナイフを持っていく。
「なるほど、物理でやるタイプか」
そう分析したのち、レイズは体に魔力を纏う。そして二人はぶつかり合ったが、結果はすぐに分かった。彼女がナイフを握りつぶし、そのまま男の腹を思い切り殴ったのだった。
「これで終わりだな」
そう言ってレイズはもう一人の男の方へと進んでいく。
「ひい、くそ。俺にはこれがあるんだ。ティムモンスター! マンティコア。いけええ!!」
男が命じた通りに、レイズに向かって行く。本来は強い魔物だ。だが、そんなものはレイズの敵ではなかった。レイズはすぐさま拳でマンティコアの顔を殴り、吹き飛ぶマンティコアに魔法をぶつけた。氷の槍だ。それによってあっさりと串刺しになった。
「これで終わりか? もっと強い魔物は低無視てないのかよ」
「いやいや、ありえねえよ」
男はおびえる。
「だって、マンティコアだぜ。最強クラスのモンスターじゃねえのかよ」
「私はドラゴンも倒した女だ、わあつぃと張り合いたいのなら魔王でも連れてこい」
そしてあっさりと魔物使いも捕縛された。レイズの手によって。
「ただいま」
そう、二人の悪人を連れたレイズがギルドの中に帰還する。
「帰ったか、それでその人たちは?」
「とらえたんだよ。こいつらペットさらいなんてやってやがった。最低な連中だ」
「……珍しく怠惰以外の感情を出したね。レイズ」
「うるさい。私は依頼をこなしただけだ。という訳でほら」
と、レイズは異空間から一匹のペットを取り出した。
「これがお前のペットだ。大事にしてやれよ」
そう言ってレイズはペットを手放す手すぐに少年のもとに行き、尻尾で舐めた。
「ちょっとやめろよ、ポチ」
そう言って一人と一匹は互いにじゃれ合う。その光景を見て、レイズは微笑む。まるで、親のような顔で。
「レイズ、かわいい顔して」
そう言ってラニアはにやにやとする。
「ラニア。黙れ」
レイズはイラついた様子で手を向ける。
「やめてよ。あんたにかなうわけないでしょ」
ラニアは高さんのポーズをとる。実際ラニアが勝てるわけがない。ゴブリンがケルベロスには向かうようなものだ。
「私はあの二人がいいと思っただけだよ」
そう言って照れ隠しにレイズはそばに置いてあった酒を飲む。それを見てラニアは「ふふ」と笑う。
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