第6話 エイプリルフールー嫌いって言われた件
「あなたなんて嫌いです!」
そう、友達の彩花が家に来てそう言った。
俺の頭はすぐにその状況を理解しようとはしなかった。
なぜわざわざ家に来て絶縁を叩きつけるのか。
俺は何の言葉も返すことができなかった。そのせいで無言の時間ができてしまった。
彼女も気まずそうな顔をしている。この状況どうしたらいいんだ。
彩花とは一昨日カラオケで一日中熱唱していた。もしかして一昨日何か彩花に対して失礼な行動をしたのだろうか。そう考えると、冷や汗が頬を伝う、
どうすれば彩花との仲を取り戻せるだろうか、どうすれば一昨日までの関係に戻れるのだろうか。
もはや何もかも分からなくなった。
「そうか……」とだけ言い残して、部屋へと駆け出していった。部屋に引きこもるために。
そして、部屋でゲームをするが、何も面白くない。むしろ彩花と一緒にゲームをした思い出がよみがえって、辛くなるだけだった。
そしてそんな時、ドアが開いた。母親か? と思った。くそ、ほっとけよと思いスマホをさらにいじる。
だが、そんな時、「斎君?」という彩花の声が聞こえた。すぉんな時全てがどうでもいいと思っていた俺の思考が覚醒する。すぐになんで? という言葉が脳裏に浮かんだ。なぜわざわざ嫌いな人の部屋になんて来るんだと。
「……斎君今日が何日か知ってる?」
「え? 四月一日だろ? それがどうした?」
「ああもう! 四月一日って何の日?」
「え? エイプリルフールだけど」
それがどうしたのだろう。俺のことが嫌いなのだったらさっさとこの部屋から出ていってほしいのだが。
「エイプリルフールって何の日?」
「嘘をついていい日だけど」
それを言うと、彩花は「あーもー!!!」と怒ったような声を出して。
「嘘なのよ。私が斎君のこと嫌いっていうのは」
「どういうことだ? 彩花は俺のことが嫌いじゃないってことか?」
「そう言うこと!!」
その瞬間全てを理解した。エイプリルフールだからそんな嘘をついたのだと。同時に彩花が本当に俺のことを嫌っているわけじゃないってことが分かって安心した。
「そんな紛らわしい嘘つくなよ」
「これでだまされるとは思ってなかったの! もう」
「でもよかったわ。お前が俺のことを嫌ってるわけじゃなくて」
「本当よ。馬鹿ーー!」
そう言って彩花は俺の背中を叩きまくる。普通に痛い。
「馬鹿はひどいだろ」
「だって馬鹿だもん。……嫌いの反対が好きという事も知らないくせに……」
「なんか言った? 最後聞き取れなかったんだけど」
「何も言ってないわよ」
そして俺たちはそのままゲームをした。最高に楽しかった。
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