第5話  エイプリルフールー嘘告白をしただけなのに

 私には大事な友達がいる。所謂男友達だ。私たちには恋愛感情ではなく、友情からなる絆がある。彼、橋本忠といるときはいつも楽しい。私の中で彼といるときは本当の笑顔で笑えている、気がする。

 そんな私だが、4月一日、エイプリルフールが近づくときに思っていたことがある。それは、どんな嘘をつくかだ。シンプルな嘘、紛らわしい嘘、不謹慎な嘘、様々な嘘があるものだが、本当に嘘が思いつかないのだ。どうすれば……

 そんな時に一つの嘘、というよりもドッキリを思いついた。それは告白ドッキリというものだ。これが上手くいけば、それこそ最高のエイプリルフールにする一番の嘘だ。

 そして、エイプリルフール当日。メールで彼を呼び出すことにする。


(今日、話したいことあるから。十一時に私の家に来てくれない?)


 と、そう送った。実際私の家に来て。それは思わせだ。とはいえゲームしたりするときにいつも招待してるから、意味はないかもしれないけど。そして返事として(うん、分かった)という単調なメールが帰ってきた。


 そして十一時。


 ピンポンと、インターフォンから音がした。


「来た!」


 そして私は玄関に走っていく。考えてた最高のドッキリをするために。


「いらっしゃい」


 そう言ってドアを開け、自然な流れで部屋へと連れていく。


「それで。話って何?」


 来た! ああ、ドッキリをする荷が他sのシミ。……これは私の演技力の見せ所だ。


「私ね……ずっと言ってなかったけど。忠君のことが、好きなの」

「好きって?」

「異性としてッてこと。最初は友達のままでいようって、恋心を隠してた。でも、もう無理なの。忠君と恋人らしいことがしたい。だから、…………付き合ってください!!!」


 そう、嘘を言い切った。


「え? マジで。本当に?」

「うん」


 なに、その食い気味な反応は……


「やったー!!!」


 え? なんで喜んでるの? 私たち友達じゃなかったの?


「嘘じゃないんだよね?」


 ヤバイドウシヨウ。

 え? こんなに喜ぶとは思っていなかった。でも、嘘じゃないと言ったらそれが嘘になるし……。

 でも、伝えるしかないよね。


「じゃじゃん!!! どっきりでした――――!!! 今日はエイプリルフールだよ」


 そう、用意してたどっきり棒を見せる。バラエティ番組でよく見るような棒だ。


「え? え? え???」


 え? 忠君? こっちがえ? って言いたいんだけど。どうしてこんな変な空気になってるの?


「だめだ……」

「え?」

「だめだああああああ!!!!!!!」


 そう言って、忠君は去ってしまった。ええ、私はただドッキリしただけなのに……。


 そして、その気まずい関係は、新年度が始まっても続いている。私のクラスはエスカレータ式で上がっていく。つまり、クラスも一緒なわけだ。

 気まずすぎて本当に分からない。

 こんなことになるくらいだったら、ドッキリなんてしなければよかった。

 だが、今頃後悔したところで遅い。私には時を戻す能力ちからはないのだから。



 気まずいというのは彼も分かっているみたいだった。私の目を見ようとはしない。


 この状況は私にとっても彼にとっても良いものではない。早く、この状況を打破しなければ。


 そんな時だった。「ごめん。少しいい?」と彼が話しかけてくれたのは。


「どうしたの?」


 本当は歓迎するような形で返事をしたいのだが、気まずいので冷たい言葉しか出てこなかった。その言葉で、彼が少しビビっている。

 申し訳ない。


「この前はエイプリルフールの嘘なのに一人盛り上がっちゃってごめん」

「いや、こっちこそ。変なドッキリを仕掛けてごめんなさい」

「俺は……舞い上がっちゃったのは悪いと思っている。でも、それくらいお前のことが好きなんだ。喜久子。だから俺と付き合ってくれ。分かっている返事は」

「うん。付き合うことは出来ない。だって、友達としてしか見れていないから」


 あれから幾度も考えたのだが、異性として見ることは出来なかった。


「でも、友達の延長上で付き合うのならいいよ。その過程で忠君のことを友達としても好きになるかもしれないし」

「分かった。絶対に好きにさせるから。覚悟しといてよ」

「うん! 私を楽しませてね」

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