第13話自宅にて母親と

「おかえり…ってお客さん来ていたのね。こんにちは」


部屋のドアを開けた母親は聖香と相対して柔和な笑みを浮かべる。

しかしながら傷だらけの僕の顔面を見て怪訝な表情を浮かべていた。


「なによ…その傷は…」


心配しているが怪訝な表情のほうが勝っている母親は聖香をそっちのけで再度質問を繰り返した。


「あぁー…ちょっとトラブルに巻き込まれた」


「トラブル?ちょっとって感じには思えないけど?」


「まぁ…バイト先の悪い先輩に拉致されて…マンションの一室で殴られてた」


「は?警察には行ったの?」


「それは…」


言葉に詰まっている僕に母親は未だに怪訝な表情を浮かべ続けている。

どの様にして説明をすれば良いのかわからずにいると…


「七星くんと一緒のバイトをしている桃井聖香ももいせいかと言います。

私が七星くんと仲良くしているせいで逆恨みのようなものをされまして…

七星くんは怪我をすることになりました。

申し訳ありません。私のせいです…」


「そう。でも聖香さんは直接関係あるわけじゃないでしょ?

その先輩とやらが光を傷つけたわけだし。

それにその言い振りからして聖香さんが警察を呼んでくれたんじゃない?」


「はい。実は父親が警察官でして…

父に頼み込んで七星くんを助けてもらいました。

犯人等は全員捕まりましたし安心してください…

なんて無責任な言葉で申し訳ありません。

私のせいだって言うのに…」


「まぁ。良いのよ。男の子だもの。

これぐらいの傷はなんてこと無いでしょ?

それに聖香さんが光と一緒に居てくれるなら…

安心よね?」


母親は聖香と僕に交互に視線を向けてニタニタと微笑んでいた。

僕は何とも言えない表情を浮かべて頷くと聖香も少しだけ気まずそうに微笑んでいた。


「じゃあお母さんは邪魔しないから。

節度を持って仲良くしていなさい」


「はい。留守の間にお邪魔して申し訳ありません」


「良いのよ。こちらこそ何のお構いもできずに申し訳ないわね」


母親と聖香はお互いに謝罪のような言葉を口にして頭を下げていた。

部屋に残された僕と聖香は少しだけ気まずい雰囲気に包まれながら固唾をのんでいたことだろう。


「ゲームしない?」


先に口を開いてくれたのは聖香の方だった。

救われた気分になった僕は笑みを浮かべて自然と頷いていた。

僕と聖香はそこからお互いにハマっている格闘ゲームをオフライン対戦で楽しむのであった。



聖香は僕の家で夕食を共にして。

夜八時頃に帰宅するようだった。


「送っていきなさい」


母親の言葉に従うわけでは無かったが僕はそれに頷いていた。


「もちろん。言われなくてもそのつもりだったよ」


「でも…七星くんは怪我をしていますし…」


「良いのよ。たいしたことないでしょ?

お父さんが学生の頃はこんな怪我は日常茶飯事だったわ」


「でも…」


「良いから送られなさい」


「わかりました。ありがとうございます」


そうして僕らは夜の街を歩くことになる。

寄り道すること無く…

僕は聖香を家まで送り届けるのであった。



次回。

二人きりの帰路…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る