第10話胸糞展開一旦終了

運転席には見知らぬ男性。

助手席にはバイト先の先輩が乗っていた。


「これって誘拐や拉致になりませんか?」


極めて冷静に口を開く僕だったが…


「これって誘拐や拉致になりませんか?www」


バイト先の先輩は完全に馬鹿にした口調で僕の言葉を復唱していた。

運転席の男性はそれを耳にしてゲラゲラと爆笑をしている。


「お前今の立場分かってるか?これから何されるか理解してる?」


先輩はニタニタした表情を浮かべており僕は背中に嫌な汗をかいていた。

何か言い返したいが明らかに恐怖のほうが上回っている。

ゴクリとつばを飲み込んでこの先の嫌な想像をなるべくかき消そうとしていた。


「何されるかなんて明らかだろ」


運転席の男性は僕の代わりに答えて先輩と共に笑っている。

僕の恐怖は明らかに最高潮まで達している。

しかしながら走り続ける車から無断で降りることは叶わずに…

僕は彼らに運ばれて鬱蒼としたマンションの一室に連れて行かれるのであった。




遅れて陽キャグループに戻った男子生徒は汗を拭う。

大きなため息を吐くと仲間の輪の中に戻っていった。


「さっきの男子は?」


聖香は仲間の男子に問いかけて少しだけ心配そうな表情を浮かべていた。


「えっと…先輩に連れて行かれた」


「は?それを黙って見ていたの?」


「いや…だって俺に関係ないし…」


「あんたは関係ない人間が連れ去られて見て見ぬふりする様な人間だったんだね…」


「だって…先輩に逆らうのは…」


「見損なった。何処に行ったか心当たりは?

私に見損なわれたままでいいの?

挽回するならここだよ?」


「それは…」


男子は聖香に向けて苦々しい表情を浮かべると丁寧に住所を伝えていた。

彼もきっと仲間の聖香に嫌われたくないのだろう。

聖香はスマホのマップアプリでで住所を検索して学校を急いで抜けた。


「お父さん。お願いがあるんだけど…」


聖香は父親に一生のお願いを使うような形で頼み込む。

父親はそれを了承すると娘から送られてきた住所に部下とともに向かったのである。



聖香はバスと電車を使って遅れて現場に到着することになり…

目的地には数台のパトカーが止まっていたのである。



少しだけ話しを巻き戻して。

聖香が父親に頼み込んで数分が経過したときのことである。


「娘の頼みだ。かなり事件の可能性も高い。

お前らも現場についてこい」


聖香の父親は警察官でありかなり出世したエリートでもある。

多くの部下を引き連れて現場に向かった聖香の父親だった。



また別の視点に切り替わることを申し訳なく思う。

今度は僕の視点だ。

バイト先の先輩に連れられて僕は鬱蒼としたマンションの一室に監禁されていた。

多くの男性が集まっているマンションで僕は拷問のような暴力を受けていた。


「ずっと痛みつけたかったんだ。ムカつく野郎だ」


バイト先の先輩は僕を痛めつけて周りの男性はそれを笑いながら眺めている。


「助けなんて来ねぇ。俺の気が済むまでやらせてもらう」


覚悟を決めた僕はただただ殴られ蹴られ続けていた。

そんな時のことだった。

玄関の鍵が開いて…

中の男性たちは不審な表情を浮かべていた。

玄関の方へと視線を向けていた彼らだったが…


「警察だ」


その勇ましい声に一瞬怯んだ彼らを警察官は見逃すことはなく。

全員を一瞬にして制圧してしまう。


「大丈夫か?お前が聖香の友人であっているな?」


「えっと…はい…。どちら様ですか?」


「聖香の父親だ。話は後で詳しくする。今は治療が先だろう」


「ありがとうございます」


ボコボコにされていた僕は聖香の父の肩を借りてマンションを後にする。

階下に到着していた救急車に乗り込むと僕は病院へと連れて行かれたのであった。



「お父さん。七星くんは?」


「あぁ。病院に運ばれたよ。連れて行こう」


「ありがとう。助かるよ」


「学校はどうした?それに化粧を落としているな…」


「早退してきた。七星くんの前ではなるべくあの化粧をしたくないの」


「そうか…良かったな…」


「………うん…」


父親と聖香は覆面パトカーに乗り込むと七星の運ばれた病院へと急ぐのであった。


ちなみにマンションにいた男性たちは全員余罪などがあり…

法で裁かれると刑務所に運ばれたのである。


邪魔者も消えて。

傷ついた七星だったが…

ここからは胸糞な展開も少なくなることが予想された。

本格的な三角関係的な恋愛物語は始まろうとしている。



次回。

病院にて聖香と父親と七星。

三人の話し合いが始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る