第8話邪魔者が物語を動かすこともある

「そこはガードでやり過ごした方が良いですよ。

こちら側は反撃出来ない場面なので」


現在僕は聖香と通話を繋ぎながら件の格闘ゲームをプレイしていた。


「ここはガードね。ありがとう。コツ掴めてきた」


「飲み込み早いですね。ゲーム得意だとは思いませんでした」


「得意ってわけじゃないけど。勘で分かるっていうか」


「じゃあ才能があるんですね」


「そうだったら嬉しいよ」


「じゃあもう一本やってみましょうか」


「Ok」


そこから僕らは朝方まで格闘ゲームを楽しみながら雰囲気の良い時間を過ごしていくのであった。



数時間仮眠を取ると身支度を整えて自転車に乗りバイト先へと向かう。

本日は休日。

僕と聖香のシフトが被る日なのである。

バイト先の駐輪場に到着すると自転車を止めて店内へと入っていく。


「おはようございます」


挨拶を交わしてバックルームへと入り更衣室で着替えを済ませる。

軽い寝不足のため大きな伸びをするとタイムカードを押した。


「おはよう。ゲームに集中しすぎて寝不足だね」


バックヤードへと入ってきた聖香は眠そうに欠伸をするとにこやかな表情を浮かべて挨拶を交わす。


「あの後は眠れました?」


「うん。すぐに爆睡」


「同じですね」


「バイトには集中しようね」


「はい。頑張りましょう」


良い忘れて申し訳ないのだが聖香は本日も聖母清楚姿でバイト先に訪れており完全に眼福だった。

彼女は制服に着替えると同じ様にタイムカードを押してホールへと出る。

僕と聖香は本日も夕方まで二人でホールのアルバイトに従事するのであった。



「お疲れさまでした」


僕と聖香が揃ってバックルームに戻っていくと…


「おつかれ。聖香ちゃん。今度食事でもどう?」


バイト先の先輩は聖香に向けて誘うような言葉を口にしている。

僕は邪魔にならないように先に更衣室に向かい着替えを済ませる。

少しすると聖香が僕と代わるようにして更衣室に入ってくる。

僕は気まずいわけでは無かったが何も言わずにバックルームに戻っていく。


「おい。なんで俺があんな断られ方しないといけないんだ?

お前がなんか悪い噂流しているんだろ?」


「えっと…何のことですか?」


「しらばっくれるな。分かってるんだぞ?」


「僕には話が見えてこないんですが…」


「お前がいるから他の男とは遊ばないって…

なんでお前みたいな冴えないやつと聖香ちゃんが一緒にいるんだよ。

釣り合ってないっての」


「僕に言われましても…」


「とにかく。お前の方から辞退しろ。

僕らは釣り合ってないって。

お前から距離を置け。

良いな?」


バイト先の先輩に詰められていると着替えを終えた聖香が更衣室から戻って来る。

彼女は明らかに険しい表情を浮かべており今にも先輩に食って掛かりそうだった。


「あの。さっきから話が丸聞こえなんですが…

言っておきますけど私が七星くんと一緒に居たいのであって…

拒否されようと私は一緒に居続けますよ。

それに貴方は迷惑なだけなんです。

もう私達に関わらないでください」


「………覚えていろよ」


先輩は恨みに満ちた表情で僕らを一瞥するとホールへと向かう。

僕と聖香は苦笑の表情で小首をかしげるとバイト先の裏口から抜けて帰路に就くのであった。


本日僕らは寄り道せずに帰宅する。

僕は一度仮眠を取ると着信により目を覚ます。

相手は三枝リリだった。


「ゲーム教えて」


彼女の提案により僕は本日も女子にゲームを教える夜を過ごすのであった。

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