第6話突然な放課後
街に向かった僕と三枝リリだった。
「ゲームセンター行こうよ」
三枝からの提案に僕は流れるように了承していた。
そこに運悪く件の陽キャグループが居ることを知らないまま…。
「何かお目当てのゲームがあるの?」
ゲームセンターに向かう道中で三枝に質問をすると彼女はゲーム名を思い出しているようで思案気な表情を浮かべていた。
「あの…何だっけ…あれ。ストリーマーとかがこぞって配信しているゲームで…」
「なんだろう…どういうジャンルのゲーム?」
「格闘ゲームで…」
「あぁ。分かった。流行っているやつね」
「そうそう。ゲームセンターでも出来るって聞いて。やってみたくて」
「そうなんだ。僕も得意ってわけじゃないけど。少しなら出来るよ」
「やった。じゃあ教えてくれる?」
「もちろん。僕で良ければ」
「やった。早く行こう」
僕と三枝はゲームセンターに入店すると二階のアーケード筐体が存在するエリアに向かっていた。
その道中の導線に存在しているクレーンゲームエリアで先程の陽キャグループがたむろっており僕は少しだけ気まずいような嫌気が指すような思いを抱きながら…
彼ら彼女らを素通りしていく。
「さっきの初々しいカップルだ」
一人の男子がこちらを振り返ると僕らを見つける。
その様な独り言をボソリと残して他の面子もこちらを振り返る。
「カップルじゃないでしょ。ね?」
聖香は僕らに向けて思わず口を開いてしまったようで…
しまったという表情を浮かべているようだった。
「聖香ちゃん。知り合いなの?」
「知り合い…じゃないけど…」
「そうなんだ。なんでカップルじゃないって分かったの?」
「ん?さっきもだけど…イチャイチャしているような雰囲気に見えなかったから」
「そっか。聖香ちゃんが言うんだからそうでしょ。男子も変に絡むなー」
「いいなぁー。俺も彼女ほしいわぁ」
陽キャグループは再びクレーンゲームに集中するようで…
僕と三枝は先を急ぐようにして二階に向かう。
エスカレーターに乗ったところで三枝は怪しむように口を開いた。
「鬼ギャルと知り合いなの?」
「え?」
「いや…だって…さっき庇っている風だったから」
「そうだった?思ったことを口にしただけじゃない?」
「そう…なら良いんだけどね…」
三枝は少しだけ含む言い方をして筐体の方へと歩き出す。
僕は少しだけやましいような複雑な心境になりながら彼女の後を追うのであった。
僕らは対戦格闘ゲームでひとしきり遊ぶと階下に向かっていた。
「どう?楽しめた?」
「うん。むずかったけど楽しかった」
「そっか。もし買ったら対戦しようよ」
「七星がやってくれるなら…買おう…かな…」
「そう。じゃあ買ったら教えて?
それまでに僕も上手になっておくから」
「えぇー。一緒に上手になろうよ」
「ある程度教えられるぐらいにはなっておきたくて」
「そう。じゃあキャリーしてね?♡」
「了解」
階下に向かうエスカレーターで僕らはにこやかに友人同士の会話を繰り返す。
そのまま出口に向かう道中を歩いていき…。
「ねぇ。少し話したいんだけど…」
出口には鬼ギャルもとい…
何処かでメイクを完全に落とした聖母清楚姿の聖香の姿があり…
「誰?知り合い?」
三枝は完全に彼女の正体に気付いていないようだった。
僕は少しだけ苦笑の表情を浮かべていたことだろう。
しかしながら何かしらの事情を察した三枝も同じ様な表情を浮かべると僕に別れの挨拶をする。
「じゃあここで。また明日ね」
「あぁ。じゃあまた明日」
三枝と別れた僕は聖香に向き合っていた。
「聖香さんどうしたんですか?今日はバイトじゃないのに…その姿は?」
「ちょっと…あの娘にヤキモチ焼いちゃって…」
「なんで?」
「友人って言ってたけど…なんか信じられなくて…」
「本当に友人ですよ。一年生の頃から仲の良い女子で」
「そう…それ以上の感情は?」
「いいえ。僕らの間には友情以上の感情は…」
「無いって言い切れる?」
「僕からは言い切れますよ」
食い気味に質問をしてくる聖香に僕は事実を口にするようにしてきっぱりと言って聞かせていた。
「とりあえず…この後時間ある?」
「はい。ありますよ」
「よし♡じゃあついてきて」
突然僕と聖香の放課後はここから始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。