第2話休日の早朝から
休日の早朝のことだった。
本日もアルバイトのシフトが十時から入っていた。
スマホに通知が届いて目を覚ました僕はベッドの縁に腰掛けると大きな伸びをした。
一つ無気力な欠伸が出るとスマホを充電器から取り外した。
ロックを解除して通知を確認すると…
「おはよう。バイトの前に会えない?」
相手は鬼ギャル…
もとい聖母清楚の聖香からの連絡だった。
少しだけ信じられない通知を目にした僕はすぐに連絡を返した。
「わかりました。すぐに支度します。何処に集合ですか?」
「ありがとう。バイト先の前にあるファミレスはどう?」
「了解です。すぐに支度して向かいます」
「うん。本当にありがとうね」
何度も感謝を告げられて少しだけ申し訳なった僕は軽く苦笑をするとスタンプを押して返事をするのであった。
すぐに支度を整えた僕は自転車に乗ってバイト先まで向かっていた。
自宅から自転車に乗って十五分程の場所のバイト先まで向かうと駐輪場に自転車を停車させた。
そのまま目の前のファミレスまで歩いて向かうと入店する。
「こっちこっち」
本日もアルバイトのシフトに入っている為、聖香の姿は聖母清楚の見た目だった。
「おはようございます。何かありましたか?」
対面の席に腰掛けて問いかけると彼女は少しだけ苦い表情を浮かべている。
「あのね…」
何かを伝えようとしている彼女に僕は続きを促すようにして相槌を打っていた。
あまりプレッシャーを掛けないようにタッチパネルを操作してモーニングメニューを注文していた。
「それでね…」
未だにもじもじと言いにくいことでもあるかのように聖香は俯いたり髪をいじったりを繰り返していた。
焦らせる必要もないので無言で続きを待っていると…
「この間はごめんね…」
何の謝罪かわからずに首を傾げていると彼女は少しだけ慌てたような表情を浮かべて続きの言葉を口にする。
「だから…!この間…仲間が馬鹿騒ぎして…不快な思いをさせたでしょ?」
「えっと…いつのことですか?」
「あ…えっと…気にしていない?」
「そうですね。今週の平日に何か傷ついたことは無いですよ」
「そっか…それなら良かった。不快な思いをさせたって感じていたから」
「そうですか。考えすぎですよ。でも気にしてくれてありがとうございます」
「うん…」
彼女は見当違いな言葉を口にして恥ずかしいのか少しだけ俯きながらどうにか言葉を絞り出していた。
その姿を確認した僕は軽く微笑むと話題を変えるために口を開いた。
「今日もシフト一緒ですね」
「うん。七星くんが一緒だと安心するから…嬉しい…♡」
「そうですか…」
そんな言葉が口から自然と漏れたところで店員がモーニングセットを配膳してくる。
「一緒にどうですか?」
微笑んで問いかけると彼女は嬉しそうな表情で頷く。
僕らはアルバイト前の早朝にファミレスで楽しげに過ごすと本日も共に仕事に励むのであった。
「聖香さんと仲良いんだな。同じ学校なんだっけ?」
バイト先の先輩に不意に声を掛けられた僕は適当に頷いて応えていた。
「連絡先とか知ってるの?」
その質問に首を傾げて応えていると先輩は凄むような形で僕を壁に追いやった。
「あまり調子乗るなよ?
お前なんかが聖香さんに釣り合うわけ無いだろ?身の程を知れよ」
そんな言葉を投げかけられても僕にはどうしようもできない。
僕から彼女に迫ったわけではないのだ。
彼女から僕に接触してきたわけで…
困り果てている僕は次の行動を考えていると…
「七星くんを離して貰ってもいいですか?私達これから一緒に帰るので」
聖母清楚姿の聖香は毅然とした態度でバイト先の先輩と相対していた。
「くそっ…もう一度言うが…あまり調子に乗るな」
先輩は僕に対して捨て台詞の様なものを口にしてホールへと向かう。
残された僕と聖香は顔を見合わせて軽く苦笑していた。
「一緒に帰ろ?」
それに頷いて応えると僕らは揃ってバイト先を出るのであった。
次回。
バイト終わりの二人の帰り道。
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