第4話 魔法

「で、魔法ってのはどうやったら使えるようになるわけ?」

「まず魔熱量マナという概念について知る必要があるのですが。どれくらい知っていますか?」

「ざっくりとしか知らん」

魔熱量マナとはそこら辺にある魔法の元となるエネルギーのことです。人体からも微量ながら発しているのですが。その程度の魔熱量マナでは魔法を扱うことはできません。つまり魔法を扱うには魔熱量マナを大量に生成することができる生体回路を人体に作り出す必要があるのです。」

魔熱量マナってのは人体に有害という話じゃなかったか?」

「勿論、規定量以上の魔熱量マナは猛毒です。しかし生体回路ができれば魔熱量マナに耐性が付き、規定量以上の魔熱量マナを摂取しても大丈夫になります。しかし地上の魔法災害で暴発した魔熱量マナは魔法使いであっても猛毒となります。」

「で、その魔熱量マナを大量に生成する生体回路ってのはどうやったら僕の体に作られるわけ?」

「簡単ですよ。私がエルトゥーダの体内に向けて魔熱量マナを大量に生成する生体回路を作る魔法を喰らわせればいいだけです。」

「本当に簡単だな。何のリスクもないのか?」

「リスクはワンチャン死ぬかもぐらいですね。」

「おい! リスク高すぎんだろッ!!」

「だ……大丈夫です。多分、才能さえあれば生き残れますから……」

「才能って……どんな才能が必要なわけ?」

魔熱量マナに対する元々ある耐性能力です。貴族階級とかそれに近しい階級に人達は魔熱量マナへの耐性が元々高いとされています。だから貴族階級には魔法使いが多いんです。」

「要するに魔熱量マナへの耐性が低かったら、体が魔熱量マナに慣れる前に死ぬってことだな?」

「そうです。やっぱり止めますか?」

「……いいや、こんなチャンス滅多にない。やってくれ。」

「わかりました。ではやります。魔覚醒魔法ディアブレリーアコルダールレベル1」

 リトの手には微かに光る魔法陣が浮かび上がる。

 エルトゥーダは緊張した表情を隠し切れず、唇をかみしめた。

 リトの指先から放たれた光線は、まるで生き物のようにゆらゆらと曲がりくねりながら空気を切り裂いて進んでいき、光線は鮮烈な青白い輝きを放ち、エルトゥーダの胸元に一直線に突き刺さる。


 瞬間、エルトゥーダの体全体が弓なりに反り返った。

 胸に当たった光線はまるで電撃のようにエルトゥーダの体内を駆け巡り、全身の筋肉が一斉に収縮した。

 痛みは稲妻のように彼の神経を焼き、まるで内側から爆発するかのような感覚だった

「がああああ!! 痛えええ!!」

 エルトゥーダは声を上げ、意識が遠のきそうになるのを必死で堪えた。

 光線が体内を巡るごとに、エルトゥーダの細胞一つ一つが焼き尽くされまるで無数の針が内臓を突き刺しているかのような感覚が襲う。

 全身が熱に包まれ、汗が滝のように流れ落ち、目の前が白く霞み、心臓は狂ったように鼓動し、呼吸は浅く、速くなり視界は激しく揺れた。

「リトッッ!! 死にそうッ!!」

「大丈夫です! 死ぬならもうとっくに死んでいるはずです!! きっと今から!!」

 リトの言葉がエルトゥーダの耳に届いたその瞬間、光線が最後の力を振り絞るように、エルトゥーダの内側で炸裂し、その衝撃がエルトゥーダの全身を駆け巡った。

 エルトゥーダの体は再び激しく震えたが、今度は痛みと共に奇妙な温かさが湧き上がってきた。

 エルトゥーダは苦痛に歪む顔を上げ、周囲の景色が徐々に変わっていくのを感じる。

 それはまるで、世界が新たな層で覆われたかのような新感覚だった。

 胸の奥から全身に広がる温かさは、まるで命の流れが強化されたような感覚にも思える。

「な……何だ……体の中で何かが動いているように……感じるぞ……」

 エルトゥーダの手は微かに震えたが、拳を握るとその力強さがこれまでとは異なることに気づいた。

 エルトゥーダの体内には新たなエネルギーが満ち溢れ、全身がその力に応えるかのように軽く感じられた。

 エルトゥーダは深呼吸をし、その新たな感覚を楽しんだ。

「よし。大成功したみたいですね。」

魔熱量マナを大量に生成する生体回路が僕の体にできたということか?」

「はい。魔熱量マナへの耐性も付いたみたいですね。」

「じゃあ、つまり……」

「ええ、ようこそ。魔法使いの世界へ。」


 第4話を読んでいただきありがとうございます!

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