第16話 悪臭の影

佐々木一輝、藤本蓮、小川葵の三人は、遺跡の奥深くへと進み、呪いを解くための手がかりを探し続けていた。藤本の体調は悪化し続け、葵も次第に異変を感じ始めていた。


遺跡の中は一層暗く、冷たい空気が彼らを包み込んでいた。突然、葵が立ち止まり、胸を押さえた。「何か…おかしい…」彼女の顔には明らかな苦痛が浮かんでいた。


「葵さん、大丈夫ですか?」一輝は心配そうに尋ねた。


葵は苦しそうに首を横に振った。「匂いが…あまりにも強すぎる…」彼女は鼻を押さえながら言った。その瞬間、一輝も強烈な悪臭を感じた。まるで腐った肉と腐敗した野菜が混ざり合ったような、その匂いは、鼻腔を突き刺すほど強烈だった。


「これは…ただの腐敗臭ではない。」藤本は息を切らしながら言った。「呪いの影響かもしれない…」


その時、葵が突然膝から崩れ落ちた。彼女の口から血が溢れ出し、地面に赤い染みを作った。「葵さん!」一輝は驚愕し、彼女に駆け寄った。


「痛い…胸が…」葵は苦しそうに呟いた。彼女の顔は青白くなり、冷たい汗が額を伝って流れ落ちていた。


藤本も苦しみながら一輝に言った。「このままでは…彼女も危険だ。早く何とかしなければ…」


一輝は葵を支えながら、何とか彼女を落ち着かせようとした。しかし、その悪臭は一向に弱まることはなく、むしろますます強くなっていくようだった。まるで遺跡全体が腐敗し、死の気配に包まれているかのようだった。


「ここには…何かが隠されている…」一輝は低く呟いた。「この匂いが示すものを見つけなければ…」


突然、壁から再び血のような液体が滴り落ち始めた。その液体は濃厚で、鉄臭い匂いが一層強く漂った。一輝はその光景に息を呑み、恐怖と不安が一気に押し寄せた。


「何かが…ここにいる…」葵は震える声で呟いた。彼女の霊感が警告を発していることを感じた。


「急がなければならない。」一輝は冷静さを保とうと努めながら言った。「この遺跡の奥深くに進み、呪いを解くための手がかりを見つけなければ…」


葵は再び膝から崩れ落ち、苦しそうに胸を押さえた。「何かが…私に…」彼女の声はかすれていた。突然、葵の目が虚ろになり、口元に微かな笑みが浮かんだ。


「葵さん?」一輝は心配そうに声をかけた。


葵の口からは、彼女自身のものではない、冷たく低い声が聞こえてきた。「私はこの地に縛られた霊…ここで永遠に囚われている…」


藤本は驚愕の表情で葵を見つめた。「彼女に…霊が憑依している…」


「あなたは…ここに何があるのか知っているのですか?」一輝は恐る恐る尋ねた。


葵の口から出た霊の声は続けた。「この地には古の呪いが眠っている。かつて強力な霊媒師が、この呪いを封じ込めた。しかし、その力は今もなお強く、再び目覚めようとしている…」


「どうすれば…その呪いを解くことができるのですか?」一輝は必死に問いかけた。


「呪いを解くためには、特定の道具と正確な呪文が必要だ。その道具はこの遺跡の最深部に隠されている。しかし、そこには強力な守護霊が立ちはだかっている…」霊の声は続けた。


その瞬間、葵の体が激しく痙攣し、彼女の口から血が溢れ出た。「葵さん!」一輝は驚愕し、彼女を抱きかかえた。葵の目が元に戻り、彼女は苦しそうに息を吐いた。


「霊が…私に…」葵はかすれた声で言った。「彼らの声が聞こえる…彼らは助けを求めている…」


「しっかりして、葵さん。」藤本は葵の手を握りしめた。「この呪いを解くためには、あなたの力が必要だ。」


一輝は冷静さを保ちながら、葵と藤本を支えつつ、再び歩みを進めた。彼らの前には、遺跡の最深部へと続く階段が現れた。階段の先には、さらに強い悪臭が漂い、冷たい風が吹き込んできた。


「ここが…最深部か…」一輝は低く呟いた。「この先に、呪いを解くための道具があるはずだ。」


三人は階段を下り、さらに奥へと進んだ。青い光が一層強くなり、囁き声が一段と大きくなってきた。彼らの前には、さらに深い謎と恐怖が待ち受けていた。



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