絶対負けられない戦い
通勤(通学)電車って、だいたい同じ時刻の同じ電車に乗るもので。
全くの赤の他人だけれど毎日遭遇し、時に強烈なインパクトのある人がいたりする。
私が毎朝乗る電車で見かけるのは年齢は50過ぎくらいの男性。
髪はボサボサ。服装はいつも一緒。
たいてい黒いズボンに黒のポロシャツ。
黒い大きなカバンをボストンバックのようなものを下げて途中から乗り込んでくる。
一見会社員には見えない彼は、風体がちょっと変わっているが、それよりも何よりもとにかく挙動が奇妙。
彼は電車に乗り込んでくると異常にキョロキョロ周りを見渡すのである。
なんだか落ち着きのない人だなあと当初思っていたのだが、実は彼は非常に冷静であることがわかってきた。
彼は冷静に空席を、いや「空席になりそうな席」を探しているのである。
自分も例に漏れないが、電車で座っていて自身がが降車する駅になると、多少なりともモーションが変わるものである。
例えば本を読むのをやめたり、いままでいじっていた携帯から目を離したり。
うたたねから目覚めたり。
その微妙な差を感知し獲物をとらえるハンターのように全神経を使っているらしく、それゆえにキョロキョロしているのだ。
サッカーでも、特に中盤の視野の広い選手は常に選手の動きや相手の動きを俯瞰して見ることができると言うが、あれに近いのかもしれない。
その彼が、突然車内を歩くと走るの中間のスピードで滑るように移動をすることがある。
それはその獲物を見つけた時。
そして、彼がひとたびそれを感知すると降車する乗客の目の前にポジションどりをし座席をゲットするのだ。
その動きはまるでスラムダンクの桜木花道のスクリーンアウトのような見事さである。
ちなみに、私は彼が乗車してくる時にはすでに席に着席しているのでスクリーンアウトはされないものの、逆にロックオンされそうで、正直だいぶ鬱陶しい。
彼に席を取って代わられると言うことは、自身が降車する駅と言うことなので別にそれはそれで構わないのであるがなんとなく癪に障る。
なので彼のセンサーに引っ掛からぬようになるべく「ノーモーション」で下車するように努めている。
それが功を奏してか今のところ彼に私の席を取って代わられたことはないが「絶対座りたいおじさん」との「絶対負けられない戦い」
は毎朝のルーティンだったりする。。
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