エッセイ ゆるりと紡ぐ

@cikada

交渉人の小さな望み

とある日。


我が家のお風呂のドアのパッキンがボロボロになっていることに、ふと気づいた。


15年以上住んでいる我が家も、そろそろ経年劣化がちらほらと出てきているのは仕方あるまい。


ネットでとりあえず「風呂、ドア、パッキン、交換」と調べてみたら簡単に交換できそうだ。

パッキン自体は1,000円もしないようであるし、自分でやってみることにした。


まず必要なのはそのパッキンを特定すること。

風呂のなかをギロギロ眺めてみると、どうやらT社が施工したユニットバスであることがわかる。


また今まで気にしたこともなかったが「ユニットバスの型式」とコールセンターの電話番号のシールが貼ってあった。


私は、仕事柄このような場合は「型式」がわかっていると、とてもスムーズに話が運ぶことを知っている。


スマートだな、俺、、と若干調子に乗りながらコールセンターへいそいそと電話する。


要件を伝え、お風呂の型式を伝えたところトントン拍子に話が進みドアのパッキンが欲しい旨を伝えるところまでは良かったのだが、ここで思わぬ一言。


「そちらの部品は、部品単体では販売できません」


おっふ。。


なんでも当該部品は「サービススタッフ」が交換対応する部類のもので、部品単体での販売はしていないとのこと。


パッキン自体は600円程度のものであったのだが業者さんが交換するとなると、


「工賃合わせて8000円になります」


おっふ。。(2回目)


人間が動けばもちろん人件費がかかることは当たり前。それに対して異論はないけれど。

600円が8000円となると、流石におとなしく引き下がれない。


私が引き下がったとしても嫁は許さない。。

むしろそっちの方が怖い。


しかしながらコールセンターはあくまでも電話受付をする部署であるので、「恐縮そうなロボット」のように紋切り型の回答を返してくる。そして、しばらくあーだこーだ粘ったのだが


「サービスセンター(修理部門?)」へお問い合わせいただけますか?


とのこと。


ああ、これ確実にクレーマー扱いだなあ、と少し自己嫌悪にらなりながらサービスセンターへ電話してみる。


しかし、結果は「部品単体の販売はしておりません、、」というデジャブな回答だったので、


以下の2点を説明。


「自身が機械系の仕事についており、このような作業は慣れている(営業だからホントは慣れてないけど)」


「リスクヘッジのためそのような対応は理解。

万一問題が起こってもクレームを入れるつもりはない」


すると、修理を請け負う業者様であれば販売しているのですが。。とポロリ。


考えてみたら当たり前なのだが、修理するためには業者さん、つまり外注さんを必ず活用しているわけで。彼らには当然「部品だけ」を販売している。


要は彼らは「メーカー直では部品単体をユーザーに売らない」というスタンスであるだけで

「ほかの場所で部品は買えるかもしれない」のだ。


更にもう少し突っ込んでみると「ホームセンターでも売っているかも」とのこと。


しかしながらホームセンターでパッキンを買うにもパッキンそのものの部品コードがわからないとどうしようもない。


それを尋ねたところ、こちらではわからないとのことで、工場へ電話してください、、とのこと。


完全にたらい回しされている感はあるモノの、工場では、「部品コード」をあっさり教えてくれた。

ただしメーカーからは販売できないスタンスは変わらないとのこと。


しかし、部品コードさえわかればこちらのもの。インターネットであっさり特定ができ無事購入にいたる。


ブジに不器用ながらなんとか最低限の費用でパッキンを交換できた。


貴重な休日にまるで仕事のような働きをし、しかもかなりのコストカットを実現。


まさに交渉人ネゴシエーターのようだぜ。


結構満足して嫁に報告したら。


へーありがとね。


軽い。。


もうちょい褒めて欲しい。。

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