第84話 Better tomorrow(4)

「え~~~? りょこう??」



暖人は帰ってくるなり、旅行のパンフレットをたくさん持って帰って来た父に目を丸くして驚いた。



「ま、1週間は休めないけど・・4日くらいは休めるから。 国内旅行なら行けるだろ。 な、どこがいい? 夏だからやっぱり沖縄かな? 北海道もいいし。 山でキャンプとかもいいな。 川で釣りとかして、」



もう樺沢の方が嬉しくてたまらない様子だった。



「え~? どこでもいいの? むしとりとかできる?」



暖人もやっぱり嬉しそうだった。



「できるできる。 んじゃあ・・やっぱキャンプかな、」



とパンフレットを見ていると、




「かおりちゃんもいかないの?」



暖人は普通に


本当に



普通に聞いてきた。



「え・・」



ハッとしたように暖人を見た。



「かおりちゃんも。 さそおうよ。 だってかおりちゃんいるとたのしいもん、」



暖人が香織を誘おうと言っている。



ただそれだけなのに



樺沢は言い表せない



『異変』



を感じた。



いや暖人が変わったわけでもなんでもなく



何か自分たちを取り巻く



『空気』



が変わった気がした。



「ハルは・・香織ちゃんのこと、好き?」



ずっと怖くて聞けなかった質問が



スッと出てきた。



暖人はパンフレットを嬉しそうに見ながら



「え、すきだよ。 かおりちゃんといるとおもしろいし、このまえもいっしょに公園にいったときさあ、かおりちゃん手でカマキリつかまえちゃったんだよ。 すごくない?」



おかしそうに笑った。



「かおりちゃんもこどものころいっぱい虫つかまえたんだって。 いえのまわりが森になっててたくさんいたんだって。 だからへいきなのかなあ、」




暖人の無邪気な笑顔に



樺沢は開いていたパンフレットを閉じた。


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