第81話 Better tomorrow(1)
そして慌しく1学期はあっという間に過ぎ去り。
もうすぐ夏休み・・
「えっ!! 毎日弁当!?」
樺沢は暖人が学童クラブから貰ってきたプリントを見て思わず固まった。
「あ、いいよ。 べつに。 まいにちじゃなくても。 いくまえにそこのコンビニでおにぎりとか買ってくから。」
暖人は宿題をしながらあっさりとそう言った。
そう。
夏休みになれば一日中学童クラブで過ごす。
当然、昼食は弁当・・
あの保育園の時の弁当の失敗を思い出す。
あれ以降、見かねた樺沢の母が必要な時は弁当を作って届けてくれた。
いやしかし。
毎日ともなるとそれも・・
しかも、コンビニのおにぎりばっかじゃ、いくらなんでも。
「いいよ。 そんな豪華な弁当はムリだけどお父さん作るから、」
と言ってみると、暖人はガバっと顔を上げて
「え! ほんと? 毎日作ってくれるの???」
さっきは諦めたような口調だったのにすごく嬉しそうに言った。
「・・う、うん。」
そこまでのリアクションを貰ったら
絶対に作らなくちゃならなくなるぞ・・
後には引けなかった。
最近はコンビニのおにぎりやサンドイッチもすごく美味しいのに
それよりも、こんなおれが作った弁当のがいいのかなあ。
そう思うとなんだかすごく暖人がいとおしくて、樺沢は弁当作りへの決意を新たにした。
「う・・わ~~~。 うまそう!」
樺沢は弁当箱を広げて、まるで子供のように喜んだ。
「別にいつものおかずだよ。 特別なものは何もないけど。 こうやってキチンと彩りよく詰めると美味しそうでしょ?」
香織はニッコリ笑った。
「から揚げとかエビフライとか。 油物を朝からやるのは大変だけど、小さめの揚げ物用なべとか、あとは電気でできるフライヤーみたいなのも売ってるから、それを買うと便利だと思う。 あと、子供は青いものが苦手だけど、この前あたしがインゲンの胡麻和えを作ったらハルも食べていたから、胡麻和えの元も売ってるからそれで簡単にできるよ。 マヨネーズをちょっとだけ混ぜると美味しいし。」
香織が弁当つくりに悩む樺沢に『見本』のお弁当を作ってきた。
「ハルは玉子焼きが好きなんだよな、」
樺沢は形よく作られた厚焼き玉子を箸でつまんだ。
「タマゴ1個でもあの四角い玉子焼き用のフライパンがあれば練習すればできるようになるよ。 カタチが多少崩れても、ラップで包んで形を整えると冷めた頃にキレイになってるよ。」
香織はおいしそうに弁当をほおばる樺沢の姿を嬉しそうに頬杖をついて見ていた。
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