第74話 Crescent(14)
『かおりちゃんにかってもらったようふく』
小学校の日記に堂々と書く暖人。
先生は別に
誰ですか?
なんて聞かないよな・・
ウン、親戚の人とかそのくらいに思うだろう。
ハルに香織のことを書くな、とも言えないし。
樺沢はその一文にいろいろと考えを巡らせてしまった。
香織が気を利かせて
保育園の時から自分が出すぎないようにしてくれたので
今まで誰からも香織の存在を聞かれたことはない。
もう2年近くも一緒に過ごしてきて
ほとんど『家族』っぽくなってるけど。
これから暖人も香織のことをよそで聞かれることがあるかもしれない・・
樺沢は暖人の成長とともに香織との関係も考えるようになっていた。
『内縁の人』
という表現は非常に淫靡な響きがあり
決してよろしい関係でないイメージだ。
しかし
今香織は樺沢にとっては
まさに
『内縁の人』
みたいな感じになっていて、それも彼女に申し訳ない気持ちになる。
人に説明する時だって
今の関係を正直に言えば
『内縁の人』
なわけで、香織があまりにかわいそうすぎる。
暖人はこうして何のためらいもなく香織のことを公にする。
してはいけない、なんて思うと
香織に悪いし
あまり周囲に詮索されるのも
いい気持ちはしない・・
「そんなもん。 簡単やん。 結婚すりゃええやん、」
志藤はソバをすすりながら、いつものようにかる~く言った。
「そんな当たり前の答えを聞くために相談してんじゃねーんだよ・・」
ミもフタもないことを言われて
少し腹立たしかった。
「で、なんで結婚せえへんの? 暖人も姐さんに懐いてるし、」
子供のような疑問をぶつけられた。
「それは香織も暖人のことを今は一番に考えようって言ってくれてるし。 おれも・・この短い間に暖人の周囲が変わるのもよくないと思うし。」
堂々と答えられないのが
悔しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます