第56話 Sympathy(16)
ところが
「ごめん! 日曜、社長の代わりに大阪まで行かなくちゃならなくて。 日帰りにはしてもらったんだけど、」
樺沢は香織に申し訳なさそうに両手を合わせた。
「あ、そう。 まあ、しょうがないんじゃない。 水族館はいつでも行けるし。」
香織はあっさりしていた。
「・・おれから約束しといて、悪いんだけど、」
「しょうがないよ。 それにしても社長代理で出張できるようになったんだね。 信頼してもらってるじゃない、」
むしろ明るく言った。
「でも、ハルはがっかりかもね。 まあ、また日にちを変えて行こうよ。」
今度の日曜じゃなくちゃ
ダメなんだよなあ・・
ちょうど彼女の誕生日だったのに。
プレゼントも買っちゃったのに・・
樺沢は一人落胆した。
いや
もう一人の落胆者が。
「え~~? いけなくなっちゃったの~?」
やっぱり暖人に嘆かれた。
「ごめん・・どーしてもどーしても行かなくちゃなんないんだ。 ハルは悪いけどおばあちゃんとこでお留守番しててな。」
「プレゼント、どうするの~~? お父さんも買っちゃったのにー。」
「そうなんだよなー。 日曜日に帰ってこれるんだけど、夜遅くなっちゃうだろうし。」
「かおりちゃんをおどろかしたかった・・」
本当にガッカリする暖人を見ると
心がシクシク痛んだ。
「誕生日が過ぎちゃっても。 きっと香織ちゃん喜んでくれるから。 大丈夫。 お父さん、またお休みできる日を決めておくから・・」
暖人の頭を撫でた。
「ハル、昼飯だってよ、」
暖人は樺沢の実家に預けられている時は二階で一人で本を読んだりビデオを見たり絵を書いたりして過ごしている。
とにかく蕎麦屋が忙しくて、大人たちは面倒を見ていられなかった。
そんな暖人に仁が呼びに顔を出した。
「うん・・」
気もそぞろな彼に
「どした? 腹でも痛いのか?」
「・・仁くんにおねがいがあるんだけど・・」
すごくすごく言いにくそうに彼を見た。
「ハル??? どーしたの??」
待ち合わせ場所で待っていた香織は仁に連れてこられた暖人に言った。
「なんか。 どうしても佐屋さんに電話をしてくれって言うもんで、」
仁は困ったように言った。
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