第55話 Sympathy(15)

「もうすぐかおりちゃんのおたんじょうびだから。 むしのおりがみをいっぱいつくって、はこにはって。 むしかごみたくするんだ。 プレゼントにするんだよ、」



暖人は屈託なく笑った。



「『かおりちゃん』は・・いまもよく来るの?」



樺沢の母はそのかわいい折り紙のかぶとむしを手にして心配そうに聞いた。



「うん・・たまに。 おとうさんがはやくかえってくるとき。 いっしょにごはんとかたべる。」



暖人は次の折り紙に夢中だった。



一度。



自分たちが留守の間に暖人が熱を出して



彼女が暖人の面倒をみるために家まで迎えに来てくれた、と次男の仁から聞いた。



とても



しっかりしたきれいな人だと言っていた。



それでも



やっぱり暖人のことが心配だった。



「おばあちゃんにはこれができたらつくってあげるね。 かおりちゃんのたんじょうび、もうすぐなんだよ。」





こんなに嬉しそうに彼女のために折り紙を折る暖人が



健気でもあり



心配でもあり。




「え? 今度の日曜? ウン、休みだけど。」



香織は自分の記憶の中のスケジュールを確認した。




「おれも休みだから。 ハルと3人で水族館でも行かない? あいつイルカショー見たいって言ってるから、」



樺沢は普通に香織を誘った。



「うん、いいよ。 水族館かあ。 なんか久しぶり、」



香織も嬉しそうに微笑んだ。




「香織ちゃんを水族館に誘ったぞ。 ハルはちゃんとプレゼントの用意できてるのか?」



家に戻るなり樺沢は暖人に言った。



「もうできたよ! おばあちゃんちでつくったから。 あとでみせてあげる、」



何だか二人の秘密ができたみたいで



樺沢も子供のようにワクワクした。



「おとうさんはかおりちゃんにプレゼントかった?」



「うーん・・それが、まだなんだよな~~。」



「かおりちゃんはなにがすきかな?」



「なんだろう。」



彼女のことを本当に深く知る前に



暖人との生活が始まり



何となくいつも暖人を挟んでの生活になってしまい、香織のことは正直まだ知らないことが多かった。



ファッションもアクセサリーも



普通の30代の女性相応のものだし



趣味なんかも聞いたことがない。




困ったなァ・・



風呂に浸かりながら考えた。



子供がすでにちゃーんとプレゼントを用意しているというのに



おれってば



男として



自己嫌悪・・



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