第53話 Sympathy(13)
彼女がいてくれて
本当によかった
このころには樺沢にとって香織は
『自分の彼女』
という存在よりも
もっともっと大きな存在になっていた。
育児の助けは実家の家族だけでなんとかやっていけたかもしれないが
こうして暖人の精神面をいつもサポートしてくれるのは香織だった。
「ねえ。 ハルのパジャマ。 もう小さいよ。 大きいの買ってあげなくちゃ。」
暖人を寝かせて香織がリビングに戻って来た。
「え? この前買ったばっかなのになあ・・」
「最近、背も伸びたよね。 伸びてるのがわかるっていいよね。 あたしたちじゃ、もうそんなのないし。」
と明るく笑う。
「んじゃ。 帰る。 おやすみー。」
自分のバッグを手にする彼女に
そっと近づいてキスをした。
もっともっと
彼女と一緒にいたい。
ずっとそう思っていた。
それでも彼女は絶対に自分たちの家に泊まったりしない。
「また。 明日ね、」
夜遅く帰って行く彼女を以前送ろうとしたとき
子供が寝ているからって、家にひとりにするもんじゃない
と、彼女から諌められて
それもできない。
「・・気をつけて帰れよ、」
そんな言葉しかかけてやれない。
「・・とうさん・・お父さん、」
「あ?」
「おゆ、わいたよ。」
鍋が沸騰していることに気付かなかった。
「あ~~、ごめんごめん。 味噌入れなくちゃ、」
朝食の支度中ぼんやりする父に
「おとうさん、なにかあったの?」
子供につっこまれるほど、ぼんやりしていたようだった。
「え? ああ、ごめん。もうすぐ香織ちゃんの誕生日だな~~って。」
彼女の誕生日が近づいていた。
「え~? かおりちゃんのたんじょうび? かおりちゃん、なんさいなの?」
「んーと。 おとうさんよりひとつ年上。 35歳になるのかな。」
「え~? 35さい? おとうさんよりもとしうえなの? かおりちゃんのがわかいきがする・・」
この頃は生意気なことを言う
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