第48話 Sympathy(8)
父に怒鳴られ
暖人はプイっと横を向いて、そのままベッドに潜り込んだ。
「ハル!」
寝室を覗いたが
布団に包まって暖人が泣いていることがわかった。
いまだに
自分の前で泣いてくれない暖人に
ものすごい隔たりを感じた。
ようやく
うまくいきつつあったのに。
なんとか父子の生活にも慣れてきたのに。
翌朝になっても暖人は口を利かなかった。
「今日、お父さんも保育園に送りに行ったとき。 相手の子に謝るから。 ハルもちゃんと謝るんだぞ、」
身支度をしながら言ったが暖人は答えなかった。
「本当にすみませんでした、」
樺沢はまず保育園の先生に会って頭を下げた。
「幸いたいしたことなかったですし。 園のことは私たちの責任ですから。 治療費も園内のことなので区からの保険が出ますし。話がこじれないように気を遣ったつもりだったんですが・・返って申し訳ありません、」
若いその保育士は逆に頭を下げた。
「それでもケガをさせたのは事実ですから。 その怪我をさせてしまったマサキくんとお母さんに直接おわびをしたいのですが、」
「マサキくんはまだ登園の時間じゃないので。 どうか気になさらずに出勤されてください。 私からもお母さんにお伝えしておきますから、」
仕方なく帰ろうとしたが
ふっと暖人に目をやると、ずっとその様子を見ていたらしく
くるっとUターンして走って行ってしまった。
「え、なにソレ。 ハルがそんなこと理由もなしにするわけないじゃない。」
話を聞いた香織は開口一番そう言った。
「・・おれもそう思うんだけど。 ぜんぜん話してくれないからさあ。 口も利かないし。 おれのこと避けるし、」
樺沢は大きなため息をついた。
「確かに。 つきとばしてしまったのは事実かもしれない。 でも・・ハルは理由なくそんなことするわけないよ。」
「おれも・・なんかイラついて怒っちゃったからなァ。」
昨日のことを少し反省した。
「相手の親に『片親だから、』みたいなことを言われて。 カッとなっちゃって。 ハルに当たってしまった。」
「え、そんなこと言われたの??? なにその親、」
香織はあからさまにイヤな顔をした。
「にしても。 ウチは加害者だからな。 どんな理由でも手を出したら負けなんだ。 ハルにはそれをわかって欲しいのに・・」
手のかからない暖人だったが
初めて親としての『教育』にぶつかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます