第46話 Sympathy(6)
食後、子供たちはアニメに夢中だった。
「やっぱり暖人くんはお父さんとだとたくさんしゃべるんですね。 あたしとはあんまりお話してくれなくて、」
ゆうこが珈琲を淹れてきた。
「それでも。 最近だよ。 別れた時はさ、まだ3つになったばっかりくらいで、あんまりしゃべるってこともなかったし。 こっちに来た時は、ずううっとなんもしゃべんないでさ。 おれも小さい子供と何話していいかわかんなくて、」
樺沢は苦笑いをした。
「笑ったりも。 あんまりなかった。 すげえおとなしいのかなって思ってたけど。 保育園ではけっこう賑やからしいんだ。 友達ともたくさん遊ぶし。」
「そうですか、」
「同じメシ食って。 一緒に風呂入って。 一緒に寝て。そうやってくと不思議なもんで『家族』だなあって思えて。 話すことも自然になって。 笑うことも。 まあ・・ハルはまだまだおれに遠慮してっかもしれないけど、」
きっと。
樺沢さんも
暖人くんも
今はお互いの信頼関係を探しながら築くときなんだ
ゆうこは短絡的に暖人が『かわいそう』と思っていた自分を恥じた。
「生まれた時からずっと一緒の子供でも。 わからないところはたくさんあります。 あたしもまだまだ子育て途上の母親ですし。 なんだか樺沢さんと暖人くんを見てると、すっごく教えられることがたくさんあって、」
「え~~~? そんなことないって。」
樺沢は照れて笑った。
そこに
「・・ただいまって言うてんのに、誰もけえへん。 寂しいな、」
志藤はリビングのドアを開けた。
「あ、ごめんなさい。 おかえりなさい、」
ゆうこは立ちあがった。
「おかえり、」
その隣に樺沢の姿があり
「・・なんでおまえがこの家の主がいない隙に人んちで寛いでんねん、」
思わず突っ込んだ。
「まあまあまあ。 メシ、食うか? 今日は美味しい美味しいコロッケと豚汁だぞ、」
樺沢は笑って彼の席を作った。
「意味わからへんて! も~~~~。」
全ては暖人のために
周囲も温かく父子を見守った。
そして。
暖人が東京にやってきて、初めての春を迎えた。
暖人は保育園の年長になり、もう来年には小学校だった。
年長組になって1カ月ほどしたころだった。
いつものように会社帰りに実家に暖人を迎えに行った。
すると
「え・・? ハルが?」
「そうなの。 もうびっくりしちゃって。 いきなり相手の子の親が怒鳴り込んできて。 暖人がその子をケガさせたって言うのよ、」
母は困ったように言った。
樺沢は大好きなアニメも見ずに、部屋の隅でいじけたように本を読んでいる暖人を見やった。
「ケガって・・どんな?」
声を潜めて聞くと
「うん、なんか暖人につきとばされて右手首を捻挫しちゃったんですって。 もう相手のお母さんがカンカンで。 とにかく謝って、なんとかその人帰ったんだけど・・」
母もコソっと言った。
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