第17話 Began at the time(17)

そんなこんなで



世間は夏休みに突入。



香織と樺沢がそんなきっかけでつきあい始めて、4ヶ月ほどが経ったころ。



「ねえ。 今日早く終われそう。 ゴハン行く?」



朝、廊下で会った樺沢に香織は軽く言った。



すると



少しちょっと動揺したような様子を見せた後、



「あ・・ごめん。 ちょっと今日はダメなんだ。 この前も断っちゃってごめん、」



申し訳なさそうに両手を合わせた。



ここのところ



香織が誘ってもずっと断られていた。




「絶対、そのうち埋め合わせするから! ほんと、ごめん!」



まるで逃げるようにその場を立ち去ってしまった。



香織は小さなため息をついた。




ま。



いいけど。




あんなノリでつきあうことになっちゃったし。




お互いのこともいまだによく知らないし。



会えば



Hするだけの関係で。



ふられてたまるか。



ふってやる。





この日



香織は一度帰宅して、紙袋に彼が泊まっていった時に置いていったシャツやら雑誌やら



手当たり次第に詰め込み始めた。




そして、すごい勢いで家を出た。



電車で一駅の樺沢のマンションまでその勢いでやって来てしまった。



下のインターホンを押すと、既に樺沢が帰っていたようで



「はい・・」



と出た。



都合が悪いとか言っておいて!



思いっきり家にいるじゃん!!!



香織はもうそこでキレそうだった。




「あたし、」



目力全力でカメラに顔を近づけた。



「か・・香織??」



もう動揺が声に出てしまって、怪しい以外の言葉がない。



「ちょっと。 開けてくんない? 『返すモン』あるから。」



「か、返すもの???」



「あんたがあたしの部屋に置いてったもの!!」



「え? あ? ええ~~っと・・いや、それは今じゃなくても。 うん、今度取りにいくから、」



絶対に部屋にあげたくない。



そんな空気がビンビンに伝わってきた。


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