第18話 Began at the time(18)

香織はもう逆上するように



「今返したいの!!!」



インターホン前で絶叫した。



ぜったい



他の女がいる!!!



勘も素晴らしくいい彼女は彼の『異変』に感づいた。



「大声出すわよ。 早く開けなさいよ!!」



もうすでに大きな声だったので



樺沢は仕方なく施錠を解いた。





マンションの8階まで上がっていく。



すると、部屋の前で樺沢が待っていた。



「ご、ごめん・・わざわざ・・」



そそくさとその紙袋を受け取ろうとしたが



「部屋に上げなさいよ。」



香織はあくまで自分を部屋に入れたくない樺沢に挑戦的に言った。



「や・・もう・・ぜんっぜん掃除とかしてないから! ほんと・・」



樺沢はドアの前に背をくっつけて、さらに怪しい行動に出た。



「・・掃除くらい。 してあげるわよ。」



香織はニッと笑ったあと、すぐに険しい顔になり



「あんた。 いい度胸してんじゃん。 こっち来て早々34の女引っ掛けといて、こんな仕打ちされてあたしは黙ってらんない!」



そのあまりの怒りように樺沢はますますドアに背中をくっつけてできるだけ彼女から距離を取った。



「こ、こんな仕打ちって。おれ、なんも・・」



「だてに年くってないわよ! だいたい男が離れていく時は直感でわかる!」



香織のボルテージはさらに上がった。




「は、離れるって! おれは・・そんなつもりなんか!」



「んじゃあ、二股? どこまでバカにしてくれてんのよ!」



「二股なんて!! とんでもない!」



思わず一歩前に出て、逆襲した。



そのとき。



ギイっと音を立てて樺沢の部屋のドアが開いた。



「ん・・??」



香織はその隙間から見える人影に注目した。



ほんの3cmほど開いたその隙間から、つぶらな瞳がちらっと見えた。



樺沢もすっと振り返る。



「・・あめ、ふってきたと。 ・・せんたくもの、」



そして小さな小さな声が聞こえて。



香織は呆然とした。



そこにいたのは



第二の女でもなんでもなく。



小さな男の子だった。

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