第5話 Began at the time(5)

「なんやバツイチ?」



南が頬杖をついて目をぱちくりさせた。



「入社2年目で福岡に行って。 それからそこで知り合った子と結婚して。 子供も生まれたんだけど。 ま、仕事がめっちゃ忙しくて。 別にこれって理由があったわけじゃないんだけどー。 まあ・・気がついたら離婚してた、みたいな、」



樺沢は焼き鳥をもぐもぐと食べながらまた酒を飲んだ。



「子供は?」



「カミさんが連れてった。 3つだったけど・・約束では会わないってことになってて。 たぶん今5歳かなァ。」



「かわいい盛りやん。 寂しいなあ。」



南は同情した。



「んじゃあ、こっちきて一人暮らし?」



志藤は言った。



「実家のすぐそばにワンルーム借りてる。 田原町の、」



「え、おれ今浅草の浅草寺のそばに住んでんねんで。 めっちゃ近いやん、」



志藤は偶然に驚いた。



「ほんと? ああ・・おまえ社長秘書してた子と結婚したって。 この前大阪に出張に行った時、成田さんが言ってたっけ。」



「ウン。 コッチ来て半年もしないうちにな。 手えつけて子供作っちゃったんやもん。」



南は笑いながら頷いた。




「あ~~~、なんかわかる!」



樺沢は可笑しそうに焼き鳥の串を志藤のほうに向けて笑った。




「何がわかんねん! 忌々しいな、」



志藤は仏頂面で焼酎に口をつけた。



なんだかんだで飲みまくり



泉川と玉田は途中で帰り、仕事で翌朝が早い真太郎も南より先に帰ってしまった。



南と志藤もそうとう酔っぱらって



志藤は壁に寄りかかって寝込んでしまった。



南もテーブルにつっぷして動かない。



「佐屋さんは強いんだなあ。 福岡にもこんなに強い女性はいなかった、」



樺沢は笑った。



「あんたもそうとうザルね。 ぜんっぜん顔色変ってないし。」



「そうやって飲み歩いて、家に帰らなくなって。 離婚されちゃったんだけどねー、」


酔っぱらった風ではない樺沢だが、そんな風に自虐ネタをふざけて言ったりするところは



やっぱり酔っぱらった風でもあった。



「あ~~~、吐きそう。 もう飲めへん、」



志藤は寝言のようにそう言った。



「もう飲むな飲むな! おまえも弱くなったなァ、」



樺沢は豪快に笑った。




「あ、南ちゃん。 おはよ。」



翌朝、南は珍しく二日酔いだった。



「かおりん・・朝から爽やかやんかあ。 あんだけ飲んで。 あたしぜんっぜん記憶なくて気がついたらウチやった。」



オデコに手をあてて、まだ気分が悪そうだった。



「タクシーに乗せた後、真太郎さんに連絡しておいたから。」



「今朝、めっちゃ真太郎に怒られた。 いい年こいて記憶なくすかって。」



「ハハ、確かにね。」



そこに



「うーっす・・・」



志藤もあからさまに二日酔いのテイで現れた。



「ホラ、仲間が来たよ。」



香織はいつものように豪快に笑った。

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