第25話(上)グレン、アリシアに告白する
「おい、アリシア大丈夫か?しっかりしろ」
グレンはぐっしょり濡れたアリシアを抱きかかえて洞窟を出ようとした。
「お前は誰だ?こんな所で何をして…」
その男は大司教だった。
「お前アリシアに何をする気だ」
「はっ?お前がそれを言うのか?アリシアを殺そうとしたくせに…いいからどけ」
「そんな事が出来ると?」
大司教が手をかざしてグレンに手の中に浮かび上がった光を押し出した。
ぐわ~ん!!
光の帯はグレンの身体に巻き付きぎゅうぎゅう身体を締め付ける。アリシアを抱いていた手がアリシアを支えきれなくなりグレンはひざを折る。
そっとアリシアを地面に下ろすと大司教に反撃をする。
バーン!
大きな破裂音がして大司教が吹き飛ぶ。
そもそも魔族の血を引いたグレンの力にかなうはずがない。
「いいか、二度とアリシアに関わるな。もし今度近づいたらお前を殺す。アリシアは俺の番だ。こざかしい事は考えるな。俺は魔族の血を引いている。そんな事をすればすぐにわかる。いいな」
「ぐふっ…だが、魔狼をこのままには出来ん。それにお前は誰なんだ?」
大司教は苦しそうに息をしながら言った。
「お俺か。俺はグレン・シーヴォルトだ。魔狼の一頭はたった今魔界に戻した。残るは後一頭。こいつを片付ければもうアリシアに関わらないのか?」
「ああ、魔狼を退治してくれるなら…この際アリシアなどどうでもよい」
「………」
グレンははらわたが煮えくり返る。
なんだ。こいつ。アリシアの事はどうでもいいって事か。ふん、散々アリシアを利用しておきながら自分の保身ばかり考えやがって!
「わかった。では、俺が魔狼を倒す。それでいいな?二度とアリシアに関わるな!」
「ああ、魔狼を倒してくれるならそれでいい」
やられておきながら大司教はまだ偉そうにグレンに言った。
グレンは我慢できない怒りをもう一度大司教にぶつける。
大司教は洞窟の入り口の岩に身体を打ち付け今度こそ意識を失った。
ふん、これくらいで澄んだことありがたく思え。
グレンは急いでアリシアを抱き上げた。
そこにヴィルとベルジアンはやって来た。
4人で取りあえずアラーナ国のグレンの王都のはずれにある屋敷に転移した。
アリシアの服を乾かしてやりベッドに横たえる。
***
アリシアは意識を取り戻したところだ。ヴィルとベルジアンは席を外している。
グレンはベッドに横たわるアリシアのそばに椅子を置いて座る。
「アリシア覚えてるか?お前が倒れた後ターニャって人がアリシアの身体を使ってガドーラと話をしたんだ。彼女はターニャだと名乗ってアリシアの先祖だと言った。と言うことはアリシアお前は魔族の血を引いているという事になるんだが?」
「そうなんですか?驚きです。私が意識を失っている間にそんな事があったなんて…それにいきなり魔王の番だって言われた時も耳がおかしくなったのかって思いましたよ。…でも、大司教が言ってました。私には魔族の血が流れてるって…でも、まさかですよね」
アリシアはほんの少し乾いた笑いをした。
「ああ、あいつか」ぼそりとグレンがつぶやく。
大司教の事を思い出したグレンの目が細められ瞳孔がぶわぁ~と広がり始める。
それによく見ると口の中から鋭い牙のようなものがのぞき始めている。
どうやらグレンは腹を立てて理性を失い始めると魔獣の本能が強くなるらしい。
アリシアは慌てて起き上がるとグレンに近づく。
「グレン?グレン。いいから落ち着いて」
まるでグレンの頭を飼い犬のように撫ぜてみる。
「触るな!よけいイライラするだろ」
グレンがアリシアから上半身を退ける。
「ごめんなさい、そんなつもりは…」
アリシアの指がしゅるしゅるっと煙のように引いて行かれる。
「違う。違うんだアリシア。お前が嫌なんじゃない。むしろその逆なんだ。お前は俺の番だってわかったから…お前が近付くと俺はうれし過ぎて興奮して抑えが利かなくなる。だから極力お前を避けて来た…」
「番って…待って!グレン、ちょっと待って。あのね。最初に口づけした時私の魅了魔法にかかったって事はない?」
アリシアはやっとグレンの今までの態度がおかしかったのはあの時魅了魔法が発動したかもと思う。
「魅了だって?そんなことあり得ない。俺は魔族の血を引いているんだ。お前が番だって身体じゅうが反応するんだから…だからもしかしてアリシアお前も何か感じないか?」
グレンがアリシアを覗き込むように見つめる。
アリシアも番と聞いてグレンを見つめ返す。
そ、そんなに見つめないでよ。もう破壊力凄いんだから!!
アリシアはグレンから視線を逸らす。
グレンの身体がくたりと折れる。眉が下がり眦も下がってそんな姿にアリシアは心が締め付けられる。
何か言わなきゃって焦る。
私だってグレンの事嫌いじゃないから。
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