右手の犯行
天川裕司
右手の犯行
タイトル:(仮)右手の犯行
▼登場人物
●滝川美香子(たきがわ みかこ):女性。26歳。独身OL。
●越川雄太(こしかわ ゆうた):男性。27歳。美香子のフィアンセ。
●犯人:氏名年齢不詳。30代。一般的な犯人のイメージでお願いします。
●片瀬由香里(かたせ ゆかり):女性。27歳。一般的なOL。美香子と似てる。セリフなし。
●警察:こちらも一般的なイメージでOKです。
▼場所設定
●美香子の自宅:都内のアパートからマンションへ引っ越す。
●街中:山奥やサービスエリア等含め一般的なイメージでOKです。
NAは滝川美香子でよろしくお願い致します。
(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3161字)
イントロ〜
皆さんこんにちは。
皆さんは山奥で事件に遭った事なんてありますか?
事件と名の付くものにはどんなものにも遭いたくありませんよね。
でもそうした事件と言うのはどんなに遭いたくないと思っていても、
向こうから勝手にやってきて、ある日、
知らない内にそれが目の前で展開されていたりするものです。
今回はそんな得体の知れない事件に遭遇してしまった、
ある女性にまつわる意味怖のお話。
メインシナリオ〜
私の名前は滝川美香子(たきがわ みかこ)。
今年26歳になる独身OL。
私には今付き合ってる彼氏がいて、名前は雄太。
私達はもう婚約している。
出会ったのは学生の頃で、雄太はとても几帳面な性格だった。
携帯には私の住所もちゃんと保存してくれており、
私の誕生日を記念日としてカレンダーに記録してくれている。
いたずら好きだが、とても優しい彼氏。
今日は雄太と一緒にドライブへとしゃれこみ、
そのまま景色の良い山中(さんちゅう)へと来ていた。
美香子「へぇ〜こんな場所あったんだぁ♫」
雄太「すごいキレイな場所だろう?ずっと前からこのスポット、目をつけてたんだ」
山の頂きから見える街の景色は
まるで宝石を散りばめたように美しかった。
でも私は昨日までの仕事疲れで、
そのドライブの最中でもウトウト眠りかけていた。
なので、その景色を見た後も眠気が襲ってきて…
美香子「ごめん、ちょっと眠るね。着いたら起こして」
と言って、運転する彼氏の横で本格的に眠ってしまった。
雄太「おいおい、せっかくデートなのに眠るヤツなんてあるかよ〜。ったくしょうがねぇなぁ」
雄太は眠りこけた私を見ながらそう言って
しばらくふてくされていた。
そして途中で自動販売機のあるサービスエリアのような場所へ来て、
「ちょっとコーヒーでも買ってくる」
なんて言って雄太は車から降りて行った。
でもそこの自販機は何故か知らないけど全部売り切れで、
買う事ができなかった。
念の為に小銭を入れてもチャリンと下から落ちてくるばかり。
こんな事って本当にあるのか?
壊れていたんだろうか?
まぁ何かの理由でそうなっていたんだろうと
雄太は改めて、そのサービスエリアまで来る途中にあった
道沿いの自動販売機までコーヒーを買いに行く事にした。
まぁ別に車に乗って行く程のものでもなく、
面倒くさかったのもあったのか。
雄太は歩いてそこまで行こうとした。
でも少し時間がかかるのと、車から離れ、
私をその中に1人にする事もあり、
車のドアの鍵をちゃんと掛けて行ってくれた。
ト書き〈事件〉
私はずっと眠っている。
どれぐらい時間が過ぎたんだろうか。
しばらくしてドアをコンコンとノックする音が聞こえた。
眠気眼(ねむけまなこ)で起きた私は窓のほうを見る。
すると、下から伸びた手が窓をノックしている。
少しぎょっとしたが…
美香子「ったく、ま〜たいつもの…」
そう、雄太は昔からいたずら好きで、
私を驚かそうとしてこんな事をしょっちゅうしていた。
きっとこんな時に眠っている私にちょっと腹を立て、
起こしてやろうとした勢いで
こんないたずらをしたんだろう。
そんな気もあり…
美香子「もうやめなよ!鍵持ってんだし、コーヒー買ってきてくれたんならそのまま乗ってきたらいいじゃない…!」
そう言いながらまたウトウト。
昨日までの疲れが本当に残っていた。
そしてまた眠りにつく私。
でも一向に雄太が車に乗ってくる気配がない。
おかしいなと思いながらも瞼は重く、そのままやっぱり寝てしまう。
その眠りに落ちる間際、ブゥン…という音が3度、
車の外で小さく鳴り響き、そのまま消えていった。
眠ろうとするその頭の中で、
車がきっと3台ぐらい走って行ったんだ…
そんな事を考えていた。
でも次に目が覚めた時…
美香子「え…?」
と私はまず疑問に思った。
そのサービスエリアから一向に移動してない。
雄太も横に乗ってない。
美香子「…ちょっと、どういう事…」
そう思いながら少し恐る恐る車から降りてみると…
美香子「き、きゃあぁあ!!」
ちょうど車の右前方辺りが血だらけになっており、
車の横には雄太の左手だけが落ちていた。
ト書き〈第2の恐怖〉
私はすぐに警察を呼んだ。
それから殺人事件として捜査が開始されていく。
雄太の体はバラバラ死体として山中(さんちゅう)から見つかった。
ただ持ち物だけは散乱していたからか見つからず、
財布と携帯電話が盗まれていた。
だから警察は物取りの線からも捜査を進めていた。
ドアを叩いた手が雄太の手だと分かったのは、
その手の薬指に婚約指輪を嵌めていたから。
警察から散々事情聴取を受けながらも、
私はもう恐怖と落胆のどん底。
何をどうしても雄太はもう私のそばに帰ってこない。
美香子「う…うう…」
私はもう人目を憚らずに泣く始末。
警察も私を宥めながらどうしようもなかった。
(引っ越し)
それから数週間後。
私はそれまで住んでいたアパートから都内のマンションへと引っ越した。
そのアパートには雄太との思い出が沢山ある。
そこに居るとどうしても雄太の事を思い出し、やり切れなかったから。
美香子「雄太…どうしてあんな事に…」
犯人はまだ捕まっていない。
この近辺にいるのか遠くへ行ったのか。
警察の見立てでは、おそらく捜査の網をかいくぐり、
おそらく犯人は同じ所にはもう居ないだろう…との事。
もちろん犯人が捕まって欲しいのは確かだが、
あれだけ愛し合った恋人がもう帰ってこない…
という事のほうが私の心の中には大きく居座った。
ト書き〈オチ〉
そして、それから数日後の事だった。
美香子「え…?ウソ…」
私がそれまで住んでいたアパートの住人が、
何者かによって殺されたと言う。
部屋の持ち主は片瀬由香里さんという女性で、
歳は私とほぼ同年代で、似たようなルックス・格好をしていた。
私はとっさにあの事件の事を思い出していた。
そしてあの夜からずっと疑問に思っていた事が
心の中で更に膨らみ、それが不安と恐怖に変わった事で、
引っ越してきてまだ間もなかったがとりあえず、
すぐ次の引っ越し先の事を考えていた。
解説〜
はい、いかがでしたか?
それでは簡単に解説しましょう。
美香子が車の中で眠っていた時に起きた事件。
雄太の体はバラバラにされ山中に埋められた後、
その雄太の手だけを持って犯人は
美香子が眠っている車まで来て、その手に持った雄太の手で窓を叩き、
美香子を起こそうとしました。
でも美香子はどうしても眠たく、
また普段からいたずら好きな雄太だったのもあり、
「いつもの事」と決めつけた上、そのまま眠ってしまいます。
そしてあの惨劇。
ここまでの流れを見て、
おかしな点があったのに気づいたでしょうか?
そう、普通なら殺人犯は車の窓ガラスぐらい割って入り、
そこまでして自分の犯行を見せた相手を殺害しても良かったもの。
何故そうしなかったのかと言えば車が来たからです。
美香子は眠りに落ちる前、そのサービスエリアの横の道を
車が3台走って行く音を聞いていましたね。
だから犯人はその場での殺害を諦め、日を改めた訳です。
その理由は、雄太が持っていた携帯電話。
その携帯電話の中には美香子の住所も保存されていましたね。
でも美香子はそれまで住んでいたアパートを引っ越します。
そしてそのすぐ後に、美香子がそれまで
住んでいたその部屋の持ち主が殺害されました。
ここまで来ればもう分かるでしょうか。
そう、その部屋の持ち主を殺害したのは、
あの夜、雄太を殺害したその犯人でした。
日を改めて探しに来た理由は、あの日の事件の口封じの為。
それに感づいた美香子は
それからすぐまた引っ越しをしようと試みました。
もちろんその事を警察に言った上での事だったのでしょう。
とかくこの事件は霊の仕業か…?
なんて思う人がいるかもしれませんが、
れっきとした人による犯行でしたね。
この世で怖いのは人の欲望とサイコパス的な犯行動機。
その事を改めて思い知らされた事件だったでしょうか。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=lSTOTxGeaos
右手の犯行 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます