第24.5話 一般ポンコツ?従業員達
ーーーー ベルティーナ・ヴァーゲ ーーーー
目を細める。
おっかねぇ勇者リコは意気消沈し、勇者リーゼロッテはビクビクしながら腰を抜かしてソウヤ様を睨んでやがる。
そしてソウヤ様はアドルフィーナから花捧げの話を聞き、ソフィーを見ておられる。
ソウヤ様が、その話を知らない?
それはおかしい話だなぁ?
同じ中級文官の同僚であるソフィーからは、こう聞いてたんだ、あたしゃぁよ。
「『ソウヤ様は相当な女誑し勇者なので、孕まされる覚悟が無いならリストの掲載を辞退していただいてもかまいませんよ』って言ってたくせになぁソフィー?」
あたしの言葉を聞いたソウヤ様は耳をピクピクと動かし、「ほほぅ?」と背を見せて口笛を吹き続けるソフィーに微笑む。
おぉ怖ぇ。ソウヤ様は怒らせたら怖いっと。
スッとアドルフィーナがあたしの横に立つ。
「危うくソフィーに一杯食わされるところでしたわね」
「……そうっぽいな」
「いえ、ソフィー達、でございます。アメリア料理長以外はクロ、でございますわ」
反対側にエマが立って囁くように教えてくれた。
確かエマは中級側仕えだったはず……側仕えの視点は重要だ。
言われてみれば、料理長アメリア以外、護衛騎士2人と裏護衛のミーナがジリジリと後退してら。
すると後ろから声がした。フレデリカだったか。勇者リコ程じゃないがちっこいなコイツも。
「先人組がクロォ、と言うならぁ〜、私達はぁ、逆にいま、なーんにも、期待されていないということになりますねぇ〜」
あ? あぁ……は? つまりそれって――。
あたしの答えはフレデリカのさらに後ろから現れたルーリーに持っていかれる。
「ソフィーに二杯食わされるところ。一杯目、花捧げ前提としてリストから追い出す。二杯目、花捧げを覚悟した私達が肩透かしを食う。でも理解不能。一体誰が得をする?」
ルーリーの言う通りだ。
あたし達も同じ認識を共有する。
ルーリーも中級文官だと思う。確か最近下級文官から昇格したんだよな。
フレデリカは……よく知らん……。側仕えの方で見たことある気がするんだよなー。
唸って考えるあたし達の中で、真っ先に答えに辿り着いたのはアドルフィーナだ。
「……本来なら敵に塩を贈る助言なので慎みたいところなのですが、恐らく1人では太刀打ちできません。少しでも御協力をいただける……ならば私の答え、教えましょう。いかがです?」
あたし達はどういうことか一瞬首を傾げるが、1人では太刀打ちできないと言う言葉の意味を理解できない者はここにいなかった。
頷くあたし達に、アドルフィーナは小声で言った。
「ルーリーさんの答え。誰が得をするかですが、そんなのソフィー達に決まっています。私達が、ソウヤ様の魅力に気付く前に、あの子達が掻っ攫うつもりですわ」
予め花捧げ有りと吹聴し、工房にやってくる人材リストの人員を徹底的に絞り、それでもやって来た者には何にもない快適な生活を送らせる。いや、普通の生活を送らせる。
ソウヤ様のマイナスのイメージが、『普通』になるだけ。
…………。
そのつもりなら、相当出遅れるってことか!
「『欠陥品の厄介者達』と言われていたソフィー含む5名を完璧に使い熟すソウヤ様です。私達も、ある意味でソレを期待してここに来たのでしょう? そうでなければ花捧げの話の時点で蹴っているはずですから」
アドルフィーナの言う通りだ。
コッチも覚悟して来てる。
花捧げが無いに越したこたぁないと思っていたが、どうやら花捧げしといた方がお得な相手らしいなソウヤ様は。
あたしはアドルフィーナに確認する。
「つまり、アドルフィーナは、もうそうするつもりなんだな?」
「アナで良いですよ。王に意見し、下級文官となった私のために唯一の治癒方法であるクスリを与えてくださる心の器量、話をしていても伝わる聡明さ、そしてこれが一番重要なのですが、女性を相当大事に扱ってくださいます。女勇者共を見ても分かるでしょう? すでに王族に対する実績もありますし、ふふふ。貴女達も、ソウヤ様と直接お話すれば分かりますわ」
あ、やる気満々だわ。ナニをとは言わんけど。
そんなアナを、あたしとエマはヤレヤレと言った感じで見るが、フレデリカとルーリーは鼻を鳴らしていた。
あたしらの中でも温度差はだいぶある。
こいつは付くとこしっかり考えんと後がキチぃな。
まぁしばらくは、ソッチ方面で一般ポンコツ従業員を装うとするか。
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