002 真っ二つの剣

 ファンタジー系の作品に登場する武器で、私がとくにお気に入りのものを紹介してみたい。強力な割に安価なのがステキな逸品だ。


 ゲームでは、アイテムの値段が不可解なことがよくある。バランスの都合というメタな視点は置いといて、今回は古典的名作「ウィザードリィ」から、ロングソード+2、通称「真っ二つの剣」を見てみよう。


 シリーズ第一作「狂王の試練場」では、普通の剣よりワンランク強いロングソード+1が一万ゴールド。それに対して、さらに強力な+2は四千ゴールドなのである。なお+1に特別な効果はない。完全に+2の下位互換品だ。

 しかし二作めの「ダイヤモンドの騎士」では、攻撃力はそのままで+1は値段据え置き、+2は二万ゴールドになっている。こちらも性能は変わっていない。


 どういうことなのか? これは単純に、装飾品、美術品としての価値の違いだと思う。


 一作めの舞台は、悪の魔法使いが立て籠るダンジョンだ。つまりここで発掘されるロングソード+2は、そいつが手下の戦士に使わせるために調達、もしくは生産したものだろう。

 これは完全な実用品なので、豪華な飾りはいらない。+1は恩賞として用意した贅沢品の可能性がある。


 自前の生産品なら+1の製造行程を改善したため四千ゴールドで作れるようになったのか? とも思ったが、その可能性は低そうだ。


 城の鍛冶屋たちも+2を生産しているなら、当然+1は装飾品としての価値がなければ型落ちになって値崩れするだろうし、魔法使いにしか用意できないのなら、発掘品を店に売るとき強い方にいい値がつくはず。やはり装飾込みで+1のほうが高価と解釈するのが無難な気がする。


 一方、二作めの舞台は大地の神ニルダの寺院だ。となればここで発掘されるロングソード+2は、そこの神官戦士の装備や内部を飾るもの、あるいは奉納品と思ってよかろう。

 こちらには豪華な装飾が必要となる。ボロは着てても心は錦とはいうが、信仰を集めるには演出だって必要だし、神様に安物を捧げるわけにもいかないし。


 これが値段の差になって現れている……正直、他のアイテムの価格と照らし合わせるとはなはだ苦しいこじつけなのだが、私はこう解釈して強引に己を納得させている。


 他の武器の値段も含めて確認してみよう。


【一作め】

 ロングソード+1 10000ゴールド

 ショートソード+1 15000

 メイス+1 12500

 ダガー+2(+1は存在せず) 8000

 ロングソード+2 4000

 ショートソード+2 4000

 メイス+2 4000


【二作めで値段が変わったもの】

 ロングソード+2 20000

 ショートソード+2 30000

 メイス+2 25000


 やはり不可解な価格設定と言わざるをえない。

 とくに、長剣ロングソードより小さい短剣ショートソード短刀ダガー、刃を研ぐ手間がないから剣より安価なはずの槌矛メイスが妙にいいお値段だ。

 メイスは僧侶の武器だから、宗教的な儀式にも使うため少し豪華で、短剣やダガーは軽いぶん携帯する頻度が高くてさらに凝ってるとか?


 威力も考慮してまとめると……


【一作め】

 ロングソード+1……豪華度C

 ショートソード+1……B

 メイス+1……B

 ダガー+2……B

 ロングソード+2……E

 ショートソード+2……D

 メイス+2……D


【二作め】

 ロングソード+2……B

 ショートソード+2……A

 メイス+2……A


 くらいだろうか?


 推測だが、宗教関係がいちばん豪華ということになった。思えばわが国の神社仏閣やヨーロッパの教会も、荘厳な美しさをたたえている。信仰を集めるために高度な芸術が必要なのは、どうやら異世界でも変わらないらしい。



【他のゲームにも似たような剣があるよ!】


うろ覚えだが、たしか「プリンセスメーカー2」に登場する「恩賜おんしの剣」というアイテムも、高価なのに威力が低いとなにかで見たような気がする。これは剣術大会で優勝すると貰える、いわばトロフィーなので、はなから装飾品として作られているのだろう。

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