うみのそこ Side:B
──海は広い。陸とは比べようがない程広いけど、どの海も必ず一つに繋がっている。──
あなたはその後、なんて言っていただろうか。
──だから、そう悲観するな。例え沈んでも、その先では皆一緒だ──
そう言っていた気がする。 でも…なんでそんな話になったんだっけ。
ああ、そうだ。
ボクがまだ
人間でもそうなんだ。 だからボクたち軍艦にそんな場所がある訳がない って。 でもあなたは、そんな返しに気を悪くした様子もなく続けた。
──そうか? じゃあこれは 、私達だけの特権だな──
冗談めかして言うあなたに、ボクは思わず笑ったっけ。 でも、おかげで海に……戦争に抱いていた恐れはなくなったように思えた。 どこまで本気で言っていたのかわからなかったけど、安心したんだ。 抱きしめてくれた時の温かさと、その言葉の優しさに。
だから…… ねえ、長門お兄さま。 ボク、信じてみようと思うんですよ。 あなたの言った海の底を。 またみんなに会えるって話を。 なので、もう、怖くないです。 ボクは先にみんなに会いに行くので、あなたは後からゆっくり来てくださいね。 無理かもしれないけど、できるだけ長生きして欲しいなぁ、なんて。 さよならは……言わなくてもいいかな。 だってまた会えるから。
それじゃあ、また──……
1945年4月7日14時23分──戦艦大和 坊ノ岬にて沈没
Side:Bounomisaki 完
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