うみのそこ Side:A
──そんなの嘘ですよ。だって、人間の言う天国や地獄ですら…あるか怪しいのに ──
お前はそう言っていた。 確か、私が 沈んだ先ではまた皆と会える だなんて言った時のことだったか。
── ボクたちみたいな軍艦に、そんな場所はありませんよ。きっと──
そう言って頬を膨らますお前に、私はどんな言葉をかけただろうか。 それは私達だけの特権だ と言ったような記憶がある。
本当は、私だって本気でこんな話を信じていた訳ではなかった。 これから起こるであろう戦いに、僚艦や己の死に、怯えていたお前を元気付けたかったから……我ながら下手な嘘をついたと思う。 それでも、心のどこかではそうであって欲しいと願ったいたのは確かだ。 だから、あの言葉にはどこか真実味があったのだろう。 あの時のお前の笑顔は、今までで一番晴れやかに見えた。
だが……
なあ、大和。
お前の最期は、特攻作戦だった。
自ら、沈みに行ったようなものだった。
昔のお前なら怖がりそうだったのに、そんな様子は見せることなく、毅然とした態度で出航していったと聞いた。
だから、思うんだ。
もし、あの時の話が記憶に残っていたなら、お前は
だが、もしあの話が本当になるのなら、私はまたお前達に会えるだろうか。
その時は、どうかまた──……
1946年7月29日時間未詳──戦艦長門 ビキニ環礁にて沈没
Side:A nuclear test 完
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