第28話 最終案
私たちのアジト周辺には、まだ魔の手は迫っていなかった。いつも通りの穏やかな、変な点があるとすれば異質な張り紙が近辺に沢山張られてるくらいか、普通と言えば普通だった。
「お客さんだ。禁止エリアが近いんで退去してきたようだ。」
オーシャは見張りを続けていて、私たちの到着にはうんともすんとも言わず、兵舎の入り口に当たる部分に居る人物に指を指した。コットか。私は久しぶりにこいつの顔を見る。レティミストに居た時は影が薄かった。部下であることが不思議な程、優秀な奴ではあったけど、気が合う部類ではなかった。
「おお、ヴェミネだ。確か君、ちょっと前にスト…悪い。んんっ、データも揃ったことだし共有しないと。最後の準備段階だ。」
余計なことを言い出しそうだったので、私は落ちていた瓶を投げつけた。デリカシーの無い。それにしても、あれを見られたのか?だとしたらこいつを張り付けにしなければ。コットは咳ばらいをし、私たちよりも先に建物内へと入って行った。
「今、何を言おうとしたんだ?つまり、ヴェミネは…」
くだらない考えを巡らせるオーシャの膝を後ろから蹴り、私とカラーはそのままの流れでぞろぞろと入り口の方まで向かった。彼は頭を掻きながら納得いかない顔で私たちの跡を追い、望まずも唯一私の口から聞いたことのあるカラーは鼻で笑ってオーシャの困り顔を横目で見ていた。
「これは、これは。今すぐにでも話そうと思ったがそうはいかなくなった。言っていた機械だな?もしもーし。」
地下に降りていき、例の部屋へと行き着いたコットは、真っ先にエーツの元に行き、指でスピーカーをコツコツと叩いた。エーツは手や足に当たる部分が明確にないため、ロボットというには粗末なのだ。
「はい、なんでしょう?私は代替脳、エーツでございます。」
久しぶりにその言葉を聞いた。口癖とか何とかフォビーは言ってったっけ?今では懐かしい響きだ。
「凄い。機械的な反応じゃない。カラーは機械音痴で、電子レンジにも驚いてたからな。この目で見ないと疑いが晴れなかったんだ。銃を手に入れられたのは君のお陰でもあるそうだね。よろしく頼むよ。コットだ。」
カラーは不服そうにコットを睨んでいたが、彼は全く気にした様子もなく、エーツの反応に喜んでいた。機械的な関心で言うならチェットにも似ており、この中なら一番愛着を持ってくれるだろう。
「はい、またお役立ちできればと思います。」
エーツにはもう歯切れの悪さはなかった。カラーとの一件も今のところは引きづらずに過ごせているようだ。
「じゃあ、早速。パーティとやらも鬱陶しいし、得たものを発表しようではないか。聞いて驚け、アイツらの本丸はクレート区だ。アジト付近は、どこで学んだのか妨害電波が飛び交ってたよ。足の着きづらい組織で周りを固めてたし、キラーゴースト。なんて噂が立ったわけだ。まあ、今更だけどね。」
そんなに近くであれこれやっていたとは。私の元の段ボールハウスの目と鼻の先、って言うと違うけど、お隣さんの区だ。培養液を取りに行ったときも徒歩だったし、カート区も然りなので、そこに居たと思うと恐ろしい。
「フィアーズ、特に超越者については何か分かったか?さっきヴェミネが戦って首の動脈を切ったのに生きていたそうだ。人間なのかを疑う。」
こうカラーが質問した。私たちにとって一番の敵になるのは奴らだろうか。クラウズ・スレデムという組織の動力源は、ツィーグたちを無力化して止まるものなのか。とは言え、あいつらが居なくなればそれ以上の苦難はなさそうだけど。フィアーズの戦闘員もそこまで多くないだろうとカラーも踏んでいた。奴らは強いが、何とかなる。カラーの部隊が惨敗したのは引っかかる所だけど。
「その辺も調べ尽した。どうやら、奴らの強さは「生命栓」と言われる血流構造にあるらしい。超越者は完璧なモノだけど、その他は違うらしくてね、戦闘員は特殊な措置によって一時的に強くなっているに過ぎない。カラー、覚えてるか?やつらの使っているアイベン。内側を変える性質云々、それが超越者にもあるって。」
カラーは私たちに全部を共有したわけではなく、勿論、それは信用が薄いのではなく、時間がなかったからであるが、それ故、初めて聞くような内容だった。
「ああ、それがどうした?」
彼女もコットの話に付いていけているわけでは無さそうだった。物分かりの一番よさそうなエーツをちらりと見たが、話し出さない限り様子から見て取るのは無理だ。
「多分、この場に居る全員が首を傾げるだろうが、さっき言った生命栓は命の逆流だ。死ぬような傷を受けても、体の損傷が無かったことになって、帰って来る。要するに、死を妨げる機構だ。そして、異常な身体能力も構造が人間離れしていくから生み出されると。こういうメカニズムなんだな。」
こいつの話が下手なのか、私の理解力が乏しいのか分からなくなる。でも、私たちは全員、仲良く彼の言ったように同じ方向に首を傾けていた。
「で、対策は?」
咀嚼してみると分からなくもない。あいつらは人間であって人間ではないらしい。やはり化け物だ。
「逆のことができるんじゃないかってことだ。アイベンも人の内側を変える性質をもっているのなら、奴らの性質を変えてしまうような、いわば「生命栓キラー」が可能だってことだ。あの性質さえどうにかすれば、多分、体は腐り始めるだろう。あいつらに対抗して、こちらも毒ガスを街中に放てばゴキブリを駆除できる。」
実現できるとすれば最高の案だ。そもそも、あいつらはどうやって毒ガスを広範囲にまき散らしているのだろうか。今までを通して、自由自在に規模をコントロールしているように思える。
「うむ、悪くない。だが、毒ガスと言ったな?俺たちにも害があるのか。散布した後はどうする?」
オーシャはもう少し先を見ていた。確かに。絶対的に安全では無さそうだし、アイベンのように呼吸器系を介さずとも浸食する毒素が望ましい。そうなると、ガスマスクを常備するのが当たり前のような私たちと奴らの新兵器には成りづらい。残存すると取り返しのつかないことになる。
「無毒化はできない。今のところは。対策されても困るし、好都合じゃないか?例のガスみたいに吸わない限り大丈夫。数時間程度ならなんてことはない。と思う。臨床実験はしてないから正直解らないんだ。でも直ぐに劇毒になるのはあいつらだけだ。終わった後は、安全地帯を作るしかないね。方舟的な。」
リスクを負わないとダメか。私たちは街から出られないから、簡単に滅びる可能性を秘めている。この世界にある幾つかの街も、伝染病などの影響で成すすべなく滅んでいった
そうだ。それを自ら起こすとは。クラウズ・スレデムも半分はそういう意図を持って征服を企んでいるのかもしれない。
「方舟か。聞きたくない響きだ。これ以上荒廃するとなると…はあ、拓はなさそうだ。私は良いぞ。」
名前までは忘れたけど、どこかの街が三つの区を残して機能を完全に停止させ、その狭い領域を方舟と呼んで生活しているのだ。電報パイプは息をしていないし、最後の受信以来、その街がどうなったのかは誰も知らない。
「まあ、外壁を崩すより良い案だと思うわ。最悪皆息絶えるけど、ここで生きていくって決めたときから想定はしてたし。」
私はオーシャに野次を飛ばし、賛同した。世紀末ぽくてめっちゃ良い。私、頭悪すぎるかな。
「へっ。やってること変わらんだろ。俺も異論はない。一応、エーツにも聞いておこうか?」
彼女はガスの影響を受けないため、関係のない話と言えばそうだった。充電の不自由が生まれるだろうけど。
「私は皆さんを全力でサポートします。できることならなんでも。」
それなら言う事はない。後は彼女がどこに居たがるかだ。今の私たちは目的が一致して一緒にいるに過ぎない。私は自分の望む生活に戻る事になる。伝える日は近い。
「えっとねー、僕もその気なんだけど…まだできてないんだよね、生命栓キラー。」
コットの言葉に皆が皆ずっこけそうになった。コントをやってるじゃないんだ私たちは。こんな風に本当に体が下に落ちようとするものなんだ。
「もうある流れだったじゃん!間に合わないわよ?先に言ってよ。」
意気投合して、ちょっくら片付けに行きますか。という雰囲気だったのに。そうそう事は簡単ではなかった。
「僕は科学者であって化学者ではないからな。何が必要かまでは知ってるんだけど、それが何か分かってない。「ファンクストープ」って言うらしいんだけど、心当たりある?」
あるわけがない。そもそもコットはそれをどこで見つけたのか。そこまで辿り着いてるなら、全てを理解していてもおかしくはないはずだけど。酷い荒仕事だ。
「全員知らないって顔ね。エーツ、こういう時はどうすれば?」
私は元々の存在意義を思い出し、問いかけた。エーツは助言をし、行動の視野を広げてくれるような役割を持っている。思えば結構助けられてきた。
「私も身に覚えがありません。ですが、フォビーさんはあの実験施設を知っていたはずです。化学的な研究も行っていました。彼の遺産から何か分からないでしょうか。」
エーツは自分がなぜ知っているのかと聞かれれば、答えにくい返答をした。自分の死体が回収されたはずなので。とはカラーの前では言いたくはないだろう。例えそこから分かる可能性がゼロに等しくても。だからエーツは私の方を向いて話した。
「そ、そうね。あいつどこに暮らしてるのか知らんけど…私、旧アジトに行ってくる。エーツもおいで。」
だから私もその意図を組み、カラーたちにそう伝えた。エーツの話は100%じゃない。もし核心に迫る情報が得られたとしても、知りたくもなかった闇の部分を知る事になるかもしれないのだ。私の経験上、この街で誰かの過去や言動を深く知ろうとすると大体後悔する内容が出てくる。
「軽量化しよう。バイクに乗せれるくらいに。」
仲間たちの了承を得て、私とエーツは再びあの地に戻ることとなった。エーツは改造され、より不格好になったが殆ど機能を損なうことなく機動力が増した。
私たちのアジト周辺には、まだ魔の手は迫っていなかった。いつも通りの穏やかな、変な点があるとすれば異質な張り紙が近辺に沢山張られてるくらいか、普通と言えば普通だった。
「お客さんだ。禁止エリアが近いんで退去してきたようだ。」
オーシャは見張りを続けていて、私たちの到着にはうんともすんとも言わず、兵舎の入り口に当たる部分に居る人物に指を指した。コットか。私は久しぶりにこいつの顔を見る。レティミストに居た時は影が薄かった。部下であることが不思議な程、優秀な奴ではあったけど、気が合う部類ではなかった。
「おお、ヴェミネだ。確か君、ちょっと前にスト…悪い。んんっ、データも揃ったことだし共有しないと。最後の準備段階だ。」
余計なことを言い出しそうだったので、私は落ちていた瓶を投げつけた。デリカシーの無い。それにしても、あれを見られたのか?だとしたらこいつを張り付けにしなければ。コットは咳ばらいをし、私たちよりも先に建物内へと入って行った。
「今、何を言おうとしたんだ?つまり、ヴェミネは…」
くだらない考えを巡らせるオーシャの膝を後ろから蹴り、私とカラーはそのままの流れでぞろぞろと入り口の方まで向かった。彼は頭を掻きながら納得いかない顔で私たちの跡を追い、望まずも唯一私の口から聞いたことのあるカラーは鼻で笑ってオーシャの困り顔を横目で見ていた。
「これは、これは。今すぐにでも話そうと思ったがそうはいかなくなった。言っていた機械だな?もしもーし。」
地下に降りていき、例の部屋へと行き着いたコットは、真っ先にエーツの元に行き、指でスピーカーをコツコツと叩いた。エーツは手や足に当たる部分が明確にないため、ロボットというには粗末なのだ。
「はい、なんでしょう?私は代替脳、エーツでございます。」
久しぶりにその言葉を聞いた。口癖とか何とかフォビーは言ってったっけ?今では懐かしい響きだ。
「凄い。機械的な反応じゃない。カラーは機械音痴で、電子レンジにも驚いてたからな。この目で見ないと疑いが晴れなかったんだ。銃を手に入れられたのは君のお陰でもあるそうだね。よろしく頼むよ。コットだ。」
カラーは不服そうにコットを睨んでいたが、彼は全く気にした様子もなく、エーツの反応に喜んでいた。機械的な関心で言うならチェットにも似ており、この中なら一番愛着を持ってくれるだろう。
「はい、またお役立ちできればと思います。」
エーツにはもう歯切れの悪さはなかった。カラーとの一件も今のところは引きづらずに過ごせているようだ。
「じゃあ、早速。パーティとやらも鬱陶しいし、得たものを発表しようではないか。聞いて驚け、アイツらの本丸はクレート区だ。アジト付近は、どこで学んだのか妨害電波が飛び交ってたよ。足の着きづらい組織で周りを固めてたし、キラーゴースト。なんて噂が立ったわけだ。まあ、今更だけどね。」
そんなに近くであれこれやっていたとは。私の元の段ボールハウスの目と鼻の先、って言うと違うけど、お隣さんの区だ。培養液を取りに行ったときも徒歩だったし、カート区も然りなので、そこに居たと思うと恐ろしい。
「フィアーズ、特に超越者については何か分かったか?さっきヴェミネが戦って首の動脈を切ったのに生きていたそうだ。人間なのかを疑う。」
こうカラーが質問した。私たちにとって一番の敵になるのは奴らだろうか。クラウズ・スレデムという組織の動力源は、ツィーグたちを無力化して止まるものなのか。とは言え、あいつらが居なくなればそれ以上の苦難はなさそうだけど。フィアーズの戦闘員もそこまで多くないだろうとカラーも踏んでいた。奴らは強いが、何とかなる。
「その辺も調べ尽した。どうやら、奴らの強さは「生命栓」と言われる血流構造にあるらしい。超越者は完璧なモノだけど、その他は違うらしくてね、戦闘員は特殊な措置によって一時的に強くなっているに過ぎない。カラー、覚えてるか?やつらの使っているアイベン。内側を変える性質云々、それが超越者にもあるって。」
カラーは私たちに全部を共有したわけではなく、勿論、それは信用が薄いのではなく、時間がなかったからであるが、それ故、初めて聞くような内容だった。
「ああ、それがどうした?」
彼女もコットの話に付いていけているわけでは無さそうだった。物分かりの一番よさそうなエーツをちらりと見たが、話し出さない限り様子から見て取るのは無理だ。
「多分、この場に居る全員が首を傾げるだろうが、さっき言った生命栓は命の逆流だ。死ぬような傷を受けても、体の損傷が無かったことになって、帰って来る。要するに、死を妨げる機構だ。そして、異常な身体能力も構造が人間離れしていくから生み出されると。こういうメカニズムなんだな。」
こいつの話が下手なのか、私の理解力が乏しいのか分からなくなる。でも、私たちは全員、仲良く彼の言ったように同じ方向に首を傾けていた。
「で、対策は?」
咀嚼してみると分からなくもない。あいつらは人間であって人間ではないらしい。やはり化け物だ。
「逆のことができるんじゃないかってことだ。アイベンも人の内側を変える性質をもっているのなら、奴らの性質を変えてしまうような、いわば「生命栓キラー」が可能だってことだ。あの性質さえどうにかすれば、多分、体は腐り始めるだろう。あいつらに対抗して、こちらも毒ガスを街中に放てばゴキブリを駆除できる。」
実現できるとすれば最高の案だ。そもそも、あいつらはどうやって毒ガスを広範囲にまき散らしているのだろうか。今までを通して、自由自在に規模をコントロールしているように思える。
「うむ、悪くない。だが、毒ガスと言ったな?俺たちにも害があるのか。散布した後はどうする?」
オーシャはもう少し先を見ていた。確かに。絶対的に安全では無さそうだし、アイベンのように呼吸器系を介さずとも浸食する毒素が望ましい。そうなると、ガスマスクを常備するのが当たり前のような私たちと奴らの新兵器には成りづらい。残存すると取り返しのつかないことになる。
「無毒化はできない。今のところは。対策されても困るし、好都合じゃないか?例のガスみたいに吸わない限り大丈夫。数時間程度ならなんてことはない。と思う。臨床実験はしてないから正直解らないんだ。でも直ぐに劇毒になるのはあいつらだけだ。終わった後は、安全地帯を作るしかないね。方舟的な。」
リスクを負わないとダメか。私たちは街から出られないから、簡単に滅びる可能性を秘めている。この世界にある幾つかの街も、伝染病などの影響で成すすべなく滅んでいった
そうだ。それを自ら起こすとは。クラウズ・スレデムも半分はそういう意図を持って征服を企んでいるのかもしれない。
「方舟か。聞きたくない響きだ。これ以上荒廃するとなると…はあ、拓はなさそうだ。私は良いぞ。」
名前までは忘れたけど、どこかの街が三つの区を残して機能を完全に停止させ、その狭い領域を方舟と呼んで生活しているのだ。電報パイプは息をしていないし、最後の受信以来、その街がどうなったのかは誰も知らない。
「まあ、外壁を崩すより良い案だと思うわ。最悪皆息絶えるけど、ここで生きていくって決めたときから想定はしてたし。」
私はオーシャに野次を飛ばし、賛同した。世紀末ぽくてめっちゃ良い。私、頭悪すぎるかな。
「へっ。やってること変わらんだろ。俺も異論はない。一応、エーツにも聞いておこうか?」
彼女はガスの影響を受けないため、関係のない話と言えばそうだった。充電の不自由が生まれるだろうけど。
「私は皆さんを全力でサポートします。できることならなんでも。」
それなら言う事はない。後は彼女がどこに居たがるかだ。今の私たちは目的が一致して一緒にいるに過ぎない。私は自分の望む生活に戻る事になる。伝える日は近い。
「えっとねー、僕もその気なんだけど…まだできてないんだよね、生命栓キラー。」
コットの言葉に皆が皆ずっこけそうになった。コントをやってるじゃないんだ私たちは。こんな風に本当に体が下に落ちようとするものなんだ。
「もうある流れだったじゃん!間に合わないわよ?先に言ってよ。」
意気投合して、ちょっくら片付けに行きますか。という雰囲気だったのに。そうそう事は簡単ではなかった。
「僕は科学者であって化学者ではないからな。何が必要かまでは知ってるんだけど、それが何か分かってない。「ファンクストープ」って言うらしいんだけど、心当たりある?」
あるわけがない。そもそもコットはそれをどこで見つけたのか。そこまで辿り着いてるなら、全てを理解していてもおかしくはないはずだけど。酷い荒仕事だ。
「全員知らないって顔ね。エーツ、こういう時はどうすれば?」
私は元々の存在意義を思い出し、問いかけた。エーツは助言をし、行動の視野を広げてくれるような役割を持っている。思えば結構助けられてきた。
「私も身に覚えがありません。ですが、フォビーさんはあの実験施設を知っていたはずです。化学的な研究も行っていました。彼の遺産から何か分からないでしょうか。」
エーツは自分がなぜ知っているのかと聞かれれば、答えにくい返答をした。自分の死体が回収されたはずなので。とはカラーの前では言いたくはないだろう。例えそこから分かる可能性がゼロに等しくても。だからエーツは私の方を向いて話した。
「そ、そうね。あいつどこに暮らしてるのか知らんけど…私、旧アジトに行ってくる。エーツもおいで。」
だから私もその意図を組み、カラーたちにそう伝えた。エーツの話は100%じゃない。もし核心に迫る情報が得られたとしても、知りたくもなかった闇の部分を知る事になるかもしれないのだ。私の経験上、この街で誰かの過去や言動を深く知ろうとすると大体後悔する内容が出てくる。
「軽量化しよう。バイクに乗せれるくらいに。」
仲間たちの了承を得て、私とエーツは再びあの地に戻ることとなった。エーツは改造され、より不格好になったが殆ど機能を損なうことなく機動力が増した。
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