妹との甘い時間
「……出ちゃった……ポロッと出ちゃった……っ!」
部屋に戻ってすぐ、ベッドの上で私は枕を食っていた……じゃなくて、恥ずかしさを誤魔化すために枕に口を付けてモグモグととにかくヤケクソに噛んでいた。
「私ったらなんて失態を……っ!」
失態ってほどじゃないけど、失敗ではある……!
ただの出来心だった……兄さんの部屋に行ったら眠ってて、それで悪戯心が沸き出ちゃって……そっと跨ったはずなのに、兄さんを見ていたら我慢が出来なくなって……それで顔も近付けて……兄さんは気付いてなかったけどキスまでしちゃって……そこで兄さんが目を覚まして、思わず夢心地のままに好きって言っちゃった!
「……あ~う~」
もっと……もっと時間を掛けるつもりだった。
私が兄さんのことを好きなのは当然だけれど、それにしたってあんな何の意味もない場所で言っちゃったのは本当に終わってる!
あぁでも、意味ならキスが出来たってことであるにはあるけど……ってちょっと待って。
寝てる人に勝手にキスって……もしかしなくてもちょっとアレ案件?
「……………」
ま、まあでもバレてないし!
バレなきゃ犯罪じゃないって遠い星の人も言ってたし!
「……はぁ」
ため息を吐くくらいならしなければ良いって、そう言われるかもしれないけど仕方ないじゃん……この胸に抱く想いが加速して止められなかったんだから。
「でも……たぶん兄さんのことだから聞き間違い……とは思わないだろうけれど、それっぽく理由を付けちゃうのかな」
いっそのこと、それで私の気持ちに向き合ってくれたら早いのに。
今はまだ気持ちを深めるというか……兄さんの逃げ場を無くして、私をすきになってもらうのが一番。
兄さんが仮に私のことを何とも思ってないのに、それでいきなり順序を踏み飛ばして想いを伝えるのも違うと思うから。
「でもぶっ飛ばしちゃってるじゃん私ぃ!!」
ベッドに足を叩きつけるように、バタバタと足を動かす。
たぶん……私は自分が思う以上に浮かれてるんだ――兄さんと家族になったことで、あり得ないくらいに距離が近くなった。
四六時中一緒に居れるし、引っ付くことも出来るし……それで私はもう一人で勝負ありだと思って気を抜いてしまっていたんだ。
「ここからなのに……ふぅ」
私は、とにかく兄さんのことが大好きだ。
デートとか沢山したいし、エッチなことだっていっぱいしたい……兄さんがしたいこと全部やらせてあげたいし、私だって兄さんを喜ばせる自信はあるんだから。
「兄さん……兄さん兄さん兄さん兄さん……っ!!」
だから早く……兄さんと特別な関係になりたい。
▼▽
「もしかしなくても、夢だったのかもしれん」
そう呟いたのも仕方ない。
昨晩、優愛がボソッと好きだと囁いた事件……いやそうだよあれはもう事件に等しかった。
「……………」
だが、今朝の優愛はいつも通りだった。
俺よりも早く起きる彼女が基本的に起こしてくれるのだが、肩を揺らされて起きた時……彼女は本当にいつも通りだった。
「……ふむ」
まあでも、確かに俺も寝起きだったし……寝惚けていた可能性も無きにしも非ず。
それに寝ていたのだとしたらアレ全部が夢ということもあり得る。
……でも、明らかにリアルだったもんなぁ……なんて、そんな風に考えていると扉がノックされた。
「兄さん、入っても良いですか?」
「お、おう……」
俺の中で渦中の人物である優愛が入ってきた。
本日は土曜日ということで俺も彼女も暇を持て余しているが、それなのに優愛は少し化粧をしてるかもしれない。
服装に関しても……正直目のやり場に困る。
胸元から谷間が僅かに見えるだけでなく、服の質感のせいか胸の形が強調され、更にはスカートが短く生足があまりにも眩しい。
(……冷静に分析出来る時点で案外落ち着いてるのかも)
部屋に入ってきた優愛はニコッと微笑み、その場で一回転した。
その拍子にスカートがふわりと浮かんで黒い下着が見えてしまったが、それも一瞬だ。
「どうですかぁ? 今日の私は可愛いですかぁ?」
「……可愛いな」
いや、普通にそうとしか言えない。
素直に可愛いと思ったし、確かにこれなら世の中の男は絶対に放っておかないなと改めて思う。
(てかそのお腹のベルトは何なんだよ……っ!)
お腹に意味があるのかどうか分からないベルト……おそらくはそういうファッションなんだろうけど、胸の下部分は隙間が出来ているはずなのにそれをベルトで抑えつけることでしっかりと丸みが表現されている。
「兄さんもどこにも行かないんでしたよね?」
「用はないよ」
「じゃあ今日はずっと一緒に過ごせますねぇ」
そうして優愛は近付き……俺は隣に座ると思ったんだ。
でもそうじゃなかった――彼女はよいしょっとと可愛く言葉を漏らしながら俺の正面に立ち、そのまま胡坐を掻く俺の足の上に座った。
「お、おい!?」
「少しだけこうさせてくださいよぉ♪ 妹の願いを聞くのも兄としての役目だと思いますぅ!
「っ……」
優愛はそのままこちらに倒れ込む。
脇の下に腕を通すようにして抱き着く優愛のせいで、ほぼほぼ彼女の全身の感触が伝わってくる。
胸元で潰れる圧倒的な弾力など……そして何より、良い匂いが止めどなく鼻孔から内側に入り込んでくるかのようだった。
(……くそっ、とにかくこの状態を我慢しないとなのか俺は!?)
ただ……ずっとこうしているといやらしさよりも勝ってきた感情があった……それは妹である彼女が傍に居ることでどこか安心する感覚だ。
優愛が両腕を使って抱きしめるのならと、俺もまた彼女の背に腕を回して抱きしめた。
「あ……ふふっ、兄さん♪」
「……ほんとに甘えん坊だなお前は」
「兄さんだけですよ~」
……ったく、やっぱり俺も楽しいって……思ってんだよな。
それからしばらく、優愛が満足するまで俺はずっと彼女を抱きしめ続けるのだった。
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