触れる双丘はあまりにも柔らかい
例えば、好きな人が出来た時に何が変わるだろう。
私はそんなことを常に考えていた……中学生の二年にでもなれば、そろそろ恋愛を意識する頃合いと言っても過言じゃないから。
でも、私にもそう思える時がやってきた……こんなにも変わるんだなって驚くよりも、素敵なことなんだって思えることが。
「すぅ……すぅ……」
「……ふふっ♪」
目の前で兄さんが眠っている。
さっきまでずっと緊張した面持ちだったのに、気付けばもうすやすやとおねむだ。
「兄さん……かぁ」
お兄ちゃんから兄さんへ……呼び方の変化は些細なモノだけれど、それでも少しだけ大人になった感覚があるから不思議だった。
「兄さんは……私のことをどう思っているんだろうなぁ」
悪くは絶対に思ってない……それは断言出来る。
むしろ楽しいって思ってくれていることが容易に分かるくらいに、こう言ってはなんだけど兄さんは分かりやすい人だ。
「……………」
てか、兄さんの鎖骨良いなぁ……この角度から見える肌がこう……凄くいいなぁ……はっ!?
「いけないいけない……私ったらなんて破廉恥な」
でも……仕方なくない?
目の前で気になるを通り越して大大大好きな人が寝てるって、そんなの興奮して今すぐに色々と体を慰めたくなる案件だから!
「……兄さんは、本当に優しいね」
けれども、そんな興奮さえも押し流す兄さんの優しさ……それはあまりにも私の心を支えてくれている。
『そんな……兄妹でそんなのおかしくねえ? なあ優愛さん、俺は君が心配なんだよ。いつまでもそんな風に言って……それで変だって言われて悲しむ姿は見たくないんだ』
目を閉じれば、あの憎たらしい顔が蘇る。
サッカー部のエースだかなんだか知らないけれど、私が兄さんと仲良くすることに否定的な同級生の男子。
というか否定的なのはどうでも良いし、悪く言われることも……兄さんに矛先が向かわないのなら何でも良い……けどさぁ、なんで赤の他人である彼に私がそんなことを言われなくちゃいけないの?
私は、自分がそうしたいと思っているからそうしている……他でもない大好きな人と一緒に居たいからそうしているだけなのに。
「義理とはいえ兄妹……それがなんだって言うの……っ」
あぁもう!
こうしてあいつの言葉に悩むことすら面倒くさい! というか、あんな風に絡んできてその相手がじゃあってなると思ったら大間違いなんだけどそれを分かってるんだろうか……分からないから言ってるんだろうけど!
「でもそんな雑音、気にしなくて良いんだもんね」
兄さんは、気にするなとそう言ってくれた。
そう言われてしまったら私は止まらない……私は必ず、この恋を成就させてみせる。
本当の意味で兄さんに好きになってもらうだけでなく、私が居ないとダメなんだって思わせてしまうくらいにメロメロにする!!
「ずっとだよ……? ずっと親身になって相談に乗ってくれたり、私が傍に居たいって思った時に居てくれる兄さん……そんなの何も思わないわけがないじゃん」
兄さんは鈍感というわけじゃない……でも、そこまで人に好かれるようなことはないって思っているみたい。
そんなことないのに……中学の時も、今だって仲の良い友達は沢山居るんだから……兄さんはそれだけ素敵な人なんだよ?
「っ……体が熱いかも」
そしてもう一つ、私は兄さんに隠していることがある。
別に隠すってほどの大袈裟なことではないが、私は今……物凄くムラムラしてしまっている。
そう……私は兄さん限定でかなりやらしい女だ。
ちょっとくらい……良いかなと思って、私はパジャマのボタンを外して胸元を露出させる。
「ねえ兄さん? 今、あなたの妹は兄さんの前で胸を見せていますよ~」
あぁ……私って凄く変態かも……でも兄さんだけだから!
でもほら、SNSとかで流れてくるちょっとエッチな漫画でもこういう妹は凄く需要があるんだから!
ほんの出来心が凄まじいまでに膨れ上がったことで、私は兄さんの手を掴んで胸へと当てる……自分でもこんなに成長するんだと驚いた大きな胸に兄さんの手が触れ、ビクンと体が震えて歓喜が押し寄せる。
心だけでなく、体も兄さんのことが大好きな証だ。
「……う~ん」
「え……」
その時、兄さんが動いた。
私を思いっきり抱きしめるようにしてながら……言うならば抱き枕にされるかのように、私は兄さんの胸の中へ。
「し、幸せかも……っ!!」
ちょっと苦しい? 全然!
むしろこれから毎日これでも良いんじゃない? 今日の目的としては、ベッドに私の匂いを思いっきり擦り付けてドキドキさせよう作戦だったけれど、勢いでここまでやれるならもうずっとこれで良いんじゃないかな。
「……兄さん、おやすみぃ」
けれど……幸せに包まれていたら眠気も一気にやってくる。
「ふへへ~……覚悟してね兄さん……外堀から全部埋めちゃうからぁ」
こうして、私は眠りに就くのだった。
でもこの時の私は完全に忘れていた――パジャマのボタンを全開にしていたことを。
▼▽
「……どうしたの?」
「何があったのぉ~?」
「目の前にパイがあったんだ」
「パイ?」
「美味しそうだったぁ?」
……あぁいかんいかん。
学校に来てまでこんなにボーッとしているなんて俺らしくない……でも流石に誰でもあんなの見たらこうなるだろう!?
「ちょっと、本当に大丈夫?」
「大丈夫……」
「大丈夫じゃなさそ~」
田井中と宍道が心配そうに見つめてくるのだが、そんな視線を向けられれば向けられるほど途端に申し訳なくなる。
(あれは……あれは今でも夢だったんじゃないかって思うんだが)
朝、目を覚ました俺は優愛に気付いた。
その時点で特に慌てなかったのは即座に昨晩を思い出したから……でもあれっと思って視線を動かしたその時、俺は見てしまった。
パジャマのボタンが全て外され、解放された桃源郷の姿を。
大きく実った双丘……その頂点の淡いピンクまで全て見えてしまい、俺は悲鳴を上げそうになった……でも何とか堪え、必死に落ち着こうとした俺は何故か分からず……ボタンを留めようと奇行に出た。
『ぼ、ボタンを閉めないと……っ!』
いや、ほっとけば良いじゃんって思ったよ後になって……。
でもそれだけ俺はパニックだったんだ……それでつたない手付きで何とかボタンを閉めようとしたのだが、そこで優愛が身動ぎしたせいで両手が思いっきり豊かな膨らみを掴んでしまった。
『……んあ?』
そして目覚める優愛……俺はもう、全てを諦めたね。
『も、もう兄さんったら! わざわざ私が寝てる時じゃなくても、言ってくれたら全然良いのにぃ♡』
……何だこの妹は、好き勝手してええのんかと思った俺は兄失格だ。
けど目がトロンとしていたので完全に頭が覚醒していないからこその世迷言だと思い、結局その場は優愛に許してもらえた。
(……あれから意識しまくりなんだけどヤバくね?)
とにかく!
学校が終わるまでに何とか落ち着かせたい……朝食の時に父さんと母さんが俺たちを見て首を傾げていたし、流石に妹のパイオツを見るだけに飽き足らずガッツリ触って緊張しまくってるなんか言ってみ? 俺の人生その瞬間終わるだろうが。
「二人とも、マジで大丈夫だから……ちょっと疲れることがあった――」
「朝に妹ちゃんとおにゃんおにゃんしたとかぁ?」
「……へっ!?」
「ちょ、ちょっとこの馬鹿! 何を言ってんの!!」
ある意味でニアピンだったせいで凄くビビッた。
そういうことに苦手意識のある田井中が宍道を𠮟りつけるが、今だけはそれがありがたい……ふぅ。
(これもまた、優愛に色々と翻弄されてるってやつなのかなぁ……)
今朝の登校は大丈夫だったけど、下校の時も大丈夫……かな?
優愛のことを考えると心臓が強く鼓動する……この時の俺は、これがただの緊張としか思っていなかった……当然だけどね。
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