第26話 臨 vs 陣

天使「ん。わかった。んじゃ渡し場まで参ろうぜよ」

悪魔「まだ夏目雅子やってやがる。このお。おめえは渡し場でもどこでも帰(けえ)ればいいじゃねえかよ。俺は変幻自在のすっ飛び野郎だ。瞬間移動で病院でもどこでも行ってみせらあ。じゃあな」

天使「ま、待てえ、悪魔。おめえまだ何か考えてっぺ?(心中を読むように頭を悪魔に傾けて)あ、わかった。野郎、誰かにまたとっ憑いて飲み食いする気だな?何を……(上同様)むむ、焼き肉とビールだなや。ほだらばオラもまだ付き合うでよ。な?さ、行こ、行こ」

悪魔「バカ云ってんじゃねえ。これ以上付き纏われてたまるかよ。アバよ」


悪魔、通りに出てそのまま舞台奥に行こうとする。天使がその袖を引く。


天使「ちょ、ちょと待て……」

悪魔「るせえ。野郎、こうなったらもう魔力だ。魔力、消えやがれ!陣!(手印を結ぶ)」

天使「(念力に押されよろめく)むむ……負けてたまっか。こっちゃも天力(てんりき)、ご相伴!臨!(手印を結ぶ)」

悪魔「(引きつけられるようによろめく)苦っ……ちきしょう、陣!陣!」

天使「くわっ……臨!臨!臨!」

悪魔「陣!陣!陣!陣!」

天使「臨!臨!臨!臨!臨!臨!」


天使と悪魔、互いに手印を切りながら舞台奥へと消えて行く。

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喜劇・魔切の渡し 多谷昇太 @miyabotaru77

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