第三場 和子の自宅と通り
第27話 あすなろ教〝一日一生〟
【第三場】和子の自宅と通り(※つまり第二場と同じです。登場人物も前号と同じままです)
黒子が出て来て引割幕を上手いっぱい迄開ける。和子が台所で洗い物や良夫用の食事を準備している。為子が奥の居間の襖を開けて出て来る。
為子「あーら和子、悪かったわねえ、あと片付けさせちゃって」
和子「いえいえ、どう致しまして。それよりどう?お父さんの様子は。具合いよくなった?」
為子「ああ、大丈夫だよ。もう布団の上で鼾かいて寝てるわ。扇風機も当てておいたし、もう心配要らないよ」
和子「そーお?ほんとに大丈夫?鼾かいてって、まさか脳卒中じゃないでしょうね?救急車呼んだ方がよくない?」
為子「冗談云っちゃあいけないよ。のぼせたくらいで救急車だなんて…人に笑われるよ。救急車の人に怒られちゃうよ。それよっかお前、明日も仕事だろ?あとはあたしがするからさ、もう2階に行って自分のことをしな。あの、何て云ったっけ?〝一日一生〟とか云うご本尊さんの前でなんかするんだろ?」
和子「なんかするって何よ?それに、何がご本尊様よ。あちしが半切(はんせつ)紙に墨書きで大書しただけじゃない。お米様から教わった〝一日一生〟が出来たかどうか、毎日反省してんの」
為子「ああ、そうかい。しかしお前も大したもんだねえ。あすなろ教第一の信者ってえ感じだね」
和子「なーに云ってんのよ、おっ母さん。あすなろ教をあちしに勧めたのはおっ母さんじゃないのよ」
為子「そりゃそうだけどさ。だけどあたしはお前、お金が儲かるってえからお前にも勧めたのよ。お前に幸せになってもらいたいからねえ」
和子「幸せは、お金だけじゃあーりません。真の、本当の人生を生きることです」
為子「あああ、そうかい、そうかい。そんなことはどうだって……」
和子「どうだってって、どういうことよ……」
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