#4あるお嬢様と執事、執事が消えたので自由に過ごす。<後編>
「じゃあ次はお宅の…」
「そうね」
「懲りないですねお嬢様方」
「懲りる理由はなかったと思わない?」
「そうよ、まだバレてないもの」
「「バレなきゃ犯罪じゃないから」」
「「・・・・(ハモったわ)」」
メイドの毒舌キャラが露わになった驚きもいったん収まったお嬢様達は、ソファに座ったままニヤニヤし始めていた。
「絢音お嬢様、天羽さんにばれたらちょっとヤバいんじゃないのですか」
「やばいってどゆこと?」
「いや、その。お嬢様——佐都紀お嬢様から聞いた様子ですと、あの」
メイドは少し悩んでから、意を決したように言った。
「相当な女たらしだとのことでしたが」
「・・・・(あんたなんか話したわね)」
「・・・・(いや、そんな直接的には言ったつもりないんだけど)」
「・・・・(直接的に言わなくたって分かるわよ)」
「・・・・(なんていうか、一応概要は伝えた方がいいかと思って)」
「・・・・(いや居候ですでいいじゃないのよ)」
「・・・・(いや、一応どんな人かも伝えた方がいいかと思って)」
「・・・・(それは女たらしっていうほかないわね)」
「・・・・(でしょ)」
「・・・・(まあいいや)」
「お嬢様方?」
「あ、いや、何でもないわよ」
また黙ったままのお嬢様達にメイドが声をかけると、二人は慌てて首を振り、口をそろえてこう言った。
「「あの人は間違いなく女たらしだから」」
「そうなんですね。——よかった」
「ん?」
「ぬ?」
「鳩ちゃん今よかったって言ったよね?」
「あ、聞こえてました?」
「なにに安心してるのかなぁ、って…?」
「ああ、なんでもないです」
思わず顔を見合わせるお嬢様達。
その前で、メイドはすでに空になっていた二人分のティーカップに手を伸ばしながら答えたのだった。
「キャラ被りしなくてよかったなーって」
お嬢様達は、二人仲良くずっこけた。
「「・・・・(でも自覚アリでよかった!)」」
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というわけで、
「ついたよ」
「ついたわね」
「つきましたね」
「・・・・ん??まあ、皆さんどうぞお降りください」
屋敷の車庫に車が止められたとたんに三人そろって同じことを言っていることに不審さを感じながら、緑埜は爆速で車のすべてのドアを開けてお嬢様達と(謎に)メイドまでエスコート。
「じゃあ行くか」
「そうね」
お嬢様達はそう頷きあうと、屋敷内へと向かったのだった。
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しばらく鳩ちゃんの淹れてきたお茶なんかを飲みながらのんびりしたあと、二人はついに
「さて」
——ガチャ
「……あぁ」
「……おぉ」
「・・・・このひと、しにたいのかな」
「え。どゆこと」
「地震が起きたら全部突き刺さってくることは考えなかったのかな」
「ん。たしかに」
ベッドの真横に、プラモがぎっしり置いてあるのであった。
「もうちょっといいとこなかったのかな」
「これ確実にケガするわね」
「寝るときメガネ外してたら目つぶしになる」
ぼそぼそとそんな会話をしている時だった。
「・・・・お嬢様、一体どういうおつもりで?」
背後から、一番今聞きたくない声が聞こえてきた。
「な」
「ぬ」
「わたくしは本日外出いたしますとお伝えしたと思うのですが」
「そ、そのあの」
「わたくしがいないとおわかりになっているはずなのに、どうしてわたくしの部屋を覗いているのです」
「ちょ、ちょっと掃除でもしてみようかと思って…?」
「それならば掃除道具をお持ちのはずでは」
「い、いま鳩ちゃんに頼もうかと」
「お嬢様、不法侵入でございますよ」
「いや一応うちの敷地!!」
「自室はプライベートゾーンでございますので」
「み、見られて悪いものでもあるの?」
「人の部屋に勝手に入らないのは当然のことだと存じます」
「「・・・・(ド正論!)」」
「ちなみに、天羽の部屋にはさすがに入られていませんね」
「「は、ははは入ってなんかないわよ入るわけないでしょ」」
「あ、入られたんですね。——もしもしー」
「「うわぁぁぁ電話かけないで⁉」」
「お嬢様達が、天羽の部屋はいったってー」
お嬢様達は、いつ執事たちが返ってくるかまるで気にしていなかったことに気が付き、深く後悔したのだった。
その後、屋敷に帰ったお嬢様が、目の笑っていない満面の笑みを浮かべた天羽に背後からささやき声で怒られたことは言うまでもないことだろう。
☞The end.
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