鮮態のザ・卍ランデヴァ~Vividness The-Manji rendezvous
イズラ
Ep1.タコスは好きナンですか?
『うん、大好き! 特にとるてぃーやが美味しいよね!』。
『う~ん、食べたことないけど、匂いは好きよ。嗅いだことないけど』。
『いや、タコスは人生だろ』。
『タコスー、まぁ結構好きよ』。
『タコスね~、好きよ~』…。
「――ぜんっぜん駄目! こんなものじゃタコスの美味しさは伝わんないっ!」
そう嘆いて机につっぷす新聞部副部長・
「あぁ! もう! こいつらナンも分かってないっ!」
『タコスってあれ? ナンの粉をまぶしたやつだっけ?』。
ユキは失望と絶望が混ざった顔で、向かい合う机の椅子に座っている新聞部部長・
相変わらずガラケーをいじっているアコ。彼女的には、『スマホは甘え、ガラケー使え』の精神らしいが、ユキとしては『ガラケーは甘え、デジカメ使え』の精神であるからにして、互いに
「――おっはよーっ! いい天気だね~今日という日はー!」
その時新聞部部室に入ってきたのは、新入部員の
星のような目をキラキラと輝かせ、今朝も新聞部の朝練にやって来たのだ。
部長副部長は
「朝練だーっ! さ、二人とも立ってー! はーい、まずはキラキラ体操第八ーっ!」
こうして、今日も
その頃、高校の校舎裏では黒い影が辺りを
ガリは体育館へと続く渡り廊下の、突き当りのドアから、校舎に侵入していった――。
その様子を物陰から見ていたのは別の影。こちらは”人影”だった。
「――……ナンってなんなん……?」
気づけば部室には、ユキ以外の誰もいなくなっていた。
机に突っ伏したまま、独り言を呟く副部長。白く長い髪は、机をはみ出して垂れ下がっている。その髪が、微かになびいた、その時――。
突然、部室のドアがガラリと開く。
「■っ■えぇ」
それと同時に飛び込んできた、不明瞭な声による理解不能な言葉。
ユキは驚いて起き上がると、声の方向を振り向く。
――だが、扉付近にはすでにいない。
「……き、気のせい……? 気のせい、か……」
そうして一旦息をつこうと、窓際を振り向くと――。
「ナン■■いぃぃぃ……?」
叫び声を上げることもできず、全身から溢れ出す汗と、飛び出す涙。気づけば自分の首を締め付けて、失神しようとまでしていた。
恐怖に満ちた様子に、その怪物は愉悦の笑みを向ける。
そう、その姿はまさに――
「――ナン型の怪人が出たー!?」
そう叫んだのは黒い長髪をしたセーラー服の女子高校生。肩にスマホを挟んで、制服リボンを結んでいる最中、その顔は明らかにギョッとしていた。
「……しかも即退治命令!? あり得ないんですけど! ねぇ! 『まぁまぁ』じゃない!」
怒りの感情を電話相手にぶつける。――が、どうしようもないということは分かっているようで、リボンを結び終えると「もう分かったわよ!」と吐き捨ててさっさと電話を切ろうとスマホを手に取った。
「……はいはい! やりゃぁいいんでしょやればっ! ……えぇ? 場所?――」
――
「ひゃぁ来るな! 近寄るなー‼️」
「オーマイガー‼️」
「やめろぉ!」
「や、やめなさい! ……ど、どこ見てんの!?」
「キモイィィィィィィィ!!」
――教室内は十数体のタコス型怪人によって大パニックになっており、教員はすでに逃げ出した後だった。怪人は人間より一回り巨大なタコスに手足が生えた姿をしていた。生徒たちは逃げ惑いながらも、必死に物を投げたりと応戦しているが――。
「■■■あぁぁぁ■い!」
当たっても具が飛び散るだけであり、生地のあちこちに不気味な顔を浮かべながら更に勢いを増すばかりだった。
「■■■に■■おぉぉぉぉぉ!」
「ひゃっ‼️」
ついに一体の怪人の手が女子生徒の
「グエ■へ、お■さんとひ■■にな■おぉぉぉぉぉぉぉ」
「やめてえ……」
女子生徒は窓際で尻もちをついてしまい、まさに”これから襲われる人間”そのものとなっていた。
そして、その瞬間が――
「あっ」
――直後、タコス型怪人は勢いよくなぎ倒された。
「■■■!?!?」
周囲にいた怪人も次々となぎ倒され、教室内は具だらけになっていった。
それをこなしているのは、赤髪のロングポニテをした少女。
「え、どういうこと!?」
「あの制服、うちの学校じゃないよな!?」
「バカ! 返り具で染まってるだけだろ!」
少女のセーラー服は赤や緑と派手な色に染まっており、ひたすら暴走的にアートを作る芸術家のごとく、怪人を次々と右フックで殴り倒した。
――ついに残り一体となり、少女は扉から廊下に逃げようとするタコスに素早く走り寄り、最後も右フックで殴り飛ばした。
「ンぎゅあぁぁぁぁぁぁぁ‼️」
その顔は淡々としており、まさに”仕事人”――。
――数分後、イラついていた黒長髪の女子高生は1階の廊下を
「まっさか発生現場がウチの高校だったとはねー! ツイてるわ~!」
No.12341、クラス”
「さ! 来いや怪人はじき飛ばして天に召して…」
「……あ、今来たの? もう終わったよ……」
中に居たのは怪人ではなく、背の低い黒髪おかっぱの少年だった。
「あ、アリキ!? なんであんたが…」
「僕も派遣されたの。オマエもされてたらしいけど」
アリキは明らかに見下した顔で、目の前の女子高生を
「……テンメェナメやがってェ! そもそもあんた年下!
「お姉さん?」
「だーれが老け顔じゃぁ‼️」
そうした会話を繰り広げられている間も、後処理係たちは淡々と散らかったナン片を片付けていた。
「……はぁ、うるせ……」
中には、そう愚痴をこぼす者もいたが――。
――結局、ナンもタコスも『自然発生怪人』として処理され、周辺地域の厳重怪人注意報は、午後には解除された。身体的被害を受けた者は
――しかし、日付が変わった深夜頃のこと。
無人となった校舎内で、起こったこと。
それは、あまりにも――――
* * *
――午前1時-
それは、教室のど真ん中で、焦っているように辺りの机やらを見回していた。人外の姿はしつつ、はっきりとした”意識”を持っている――。
そう――、その”精神”が浮かべている言葉は――
――誰か……、助けて……!
「やぁ、遅れてごめんね、”人間さん”」
そのとき、何者かが教室に姿を現した。影はドキッとしたように声の方へ振り向く。
教室後ろ扉の前に立っていたのは、白衣を着た少年だった。髪は白の短髪、ニヒルな笑みを浮かべており、冷たく、よそよそしい雰囲気を漂わせていた。
少年が影に向かって一歩足を踏み出すと、影は怯えたように後ずさる。
「……あぁ、忘れてた、
あくび混じりの呑気な声で言うと、少年は足をフっと前に出し、瞬間移動するような速さで影の近くに跳んだ。――そして驚いて尻もちをついた影の顔を覗き込み、ニヤリと笑う。
「あーら、のっぺらぼうのっぺらぼう。かわいそうかわいそう……」
無情な言葉を投げかけかと思うと、近くの椅子を引き、勢いよく座り落ちた。
「さーて……」
一息つくと、少年はようやく話を切り出した。
「まず、なんでか分かってるよね――?」
「……!?」
影は震えながら首を横に振る。
「チッ」と少年が舌打ちすると、また数歩後ずさる影。
「なんで君が”精神”を怪人と入れ替えられて、ここに呼び出されたかってコト!」
強めの口調で言い放たれ、すっかり縮こまってしまった影。
「……■■……」
だが、何かを呟くと、思い返すように少年の顔を見つめる。
――それは、その日の朝のこと。
鮮態のザ・卍ランデヴァ~Vividness The-Manji rendezvous イズラ @izura
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