応援コメント

アリス喰うべし」への応援コメント

  • 今回も濃厚な連作ですね。
    妄想機械零零號さんの短歌には瞠目するばかりです。
    令和の鬼才が紡ぐ短歌連作集と
    レビューにもう一つ書きたいくらいです。

    はじまりがおわりとなった密会のようなあなたの愛書に触れる
    失語せる少女の歌は世にあらず ただ世を呪うゆえに美し
    虚像なる世に有り吾はしろたえの魚を投ぐよ 貴石に変ず

    3首選んでみました。
    1首目。秀抜な比喩とあえかな官能性。
    2首目。無の有の禍々しい美しさ。
    3首目。幻想的でビビッドな変身譚。

    とにかく素晴らしい一連で、
    楽しい陶酔感を味わわせていただきました。

    作者からの返信

    ありがとうございます。

    実は一首目は須永朝彦「ぬばたまの」の「かつてありえた世界の太古(はじめ)のやうに、あるいはこののちきたるべき世界の終末(をはり)のごとく美しい夕焼であつた」が意識されています。
    私にとって「はじめ」と「おわり」は常に昏く甘美です。

    「はじまりがおわりとなった密会」だけ抜き出してみると、そんな「一回だけのこっそりとした出会い」という身近なロマンも現れてきます。

    日本語はズルいもので、少し無理があるかもしれませんが、
    「はじまりがおわりとなった密会のような」のは「〈あなた〉」か、「はじまりがおわりとなった密会のような」のは「あなたの〈愛書〉」か、という二通りの解釈も可能です。

    二首目は本当は小説でした。
    「両親を亡くした失語症の少年が歌う声を聞いた医師の青年が狂ったように少年に執着してゆく」という未完成に終わった話です。
    あえて「少年」を「少女」に変更することでエロティシズム失われたものの、不思議な終末感が出ました。

    三首目は不思議な歌です。川野芽生さんの歌集『星の嵌め殺し』を読んでいると生まれました。でも〈魚→貴石〉というイメージは硬質性があって正解でした。
    終末、水、魚、貴石、鉱物性と、『山尾悠子作品集成』の「ムーンゲイト」が懐かしくなってくる歌です笑。