第26話
「これで全員揃ったね」
私と先輩が部室に入るなり、部長は
「真由香、優奈ちゃんはい」
と言いながら『台本』と書かれた紙を渡した。
「ありがとうございます」
受け取りながらお礼を言う。
「早速だけど練習するよ」
―
皆で立ち位置やパワポのめくるスピード、セリフを全てを確認し終わった頃には、昼休み残り15分に迫っていた。
「みんな、ここまでかかってごめん。残り15分しかないけどご飯食べてきて。解散」
早口で言いながら手を合わせた。
その間、先輩はもういなくなっていた。
部長は台本を折り、ポケットにしまい走って第一体育館のほうへ消えていってしまった。
寒川先輩はのんびりと部室のお菓子をいくつか取って出ていった。
私と千紗は時間ギリギリまで部室にいることにした。
お菓子を食べながら台本を見ながら、話す。
「ねぇ、優奈」
「何?」
「緊張していないの?」
お菓子の袋を小さく折りながら千紗は聞いてきた。「私はしてないよ。千紗のほうが緊張しているんじゃないの?」
「私もしてないよ!」
さらに折るスピードが速くなった。
「…そうなんだ」
私は“いや、してるじゃん”と思いつつそう応えた。
「ねぇ、優奈。今度さ、空いている日があったらさ一緒にご飯食べに行かない?」
千紗は折る手を止めた。私の方を見ずに言った。
「どうしたのいきなり」
千紗の持っているグミを一つもらった。
「食べに行かない?って聞いているの」
「それは知ってる。なんで急にそんなこと言ったの?」
「それは―」
千紗が理由を話そうとしたとき、
『部活動発表会で発表する生徒は第一体育館に集まってください』
とアナウンスが入った。
私と千紗はごみを捨て、部室の外に行った。
第一体育館に向かう途中、
「優奈、先に言ったことはなんでもないから」
台本を折ったり広げたりしながら千紗は呟いた。
「なんでもないって気になるじゃん」
「私、そんなこと言ってない」
「言ってたやん!」
―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます