第3話 最凶トリオがそろう

ヤクザの手下とはいえ、カツアゲをシノギにする点で小林、小森、浦はかなり粗暴な部類の未成年犯罪者であったといえる。

その中でも小林の悪辣さはダントツであり、恐喝の名人でもあった。

遊ぶ金欲しさではなく、生きるためのカツアゲをしてきたんだから気合が違う。

それは暴力団の世界の先輩である小森や浦に手口をレクチャーするほどであったから、路上のカツアゲという犯罪のジャンルではプロの領域に達していたのだ。


ヤクザ見習いの三人は8月いっぱい自分たちが縄張りと認識している道頓堀の近くで、同じ世代の若者たちを脅しては金を巻き上げ続け、その金で飯を食ったり酒を飲んだりパチンコに行ったりして過ごす。

まだ十代であり、頭も悪い彼らにヤクザらしいシノギはまだこの時点でできるわけはない。


そんな三人の下に9月になって新たに仲間が加わった。

それは後に小林や小森とともに連続リンチ事件を真っ先に主導してゆくことになる芳我匡由(18歳)である。

芳我は三人と同じ年頃であったが、小学校の時分からシンナーを吸ったり少年院に入れられたり、その若さで子供がいて離婚したりとヤクザになるにはなかなかいい感じに荒れた生活をしてきた男だ。

この男は当初自分の知人がカツアゲに遭って、その犯人である小林たちと話をつけに来た。

だが、正面切ってケンカしようとすることはなく、小森の仲介で自分たちの親分である川田にも面会。

四人目の手下として加わった。


芳我は小林たちが寝泊まりする千日町のビルで新たに生活するようになり、9月中旬には川田との間で四人は盃をかわし、成人するまでは仮としてだが暴力団組員となる。

彼らの序列は、もう組長になった気でいる川田によって一番古株の小森がトップで、それから浦、小林、芳我という順番にされた。

自分の手下歴が長い順というのは以前と変わらない。


だがこの川田、やはりヤクザとしては三流だったと言わざるを得ず、手下にする相手を見る目が全くなかったようだ。

二年前から面倒を見ている小森に傷害事件を起こされたとばっちりで自分が逮捕されて短期間服役したこともあるし、組員になった四人はますます張り切って無秩序にカツアゲを働くようになったからである。


彼らが狙うのはちょっと不良っぽい若者。

そういう若者は被害届を出さない、という計算もあったんだろうが、生意気そうな奴が偉そうに自分たちの縄張りにいるのは気に入らない。

悪党の本能として、なんだかナメられた気がする。

怖い思いと痛い思いをしてもらって、なおかつ金もいただこうとしていたのであろう。


因縁のつけ方は理不尽そのもので、「ジブンらどっから来たん」とかファーストコンタクトではフレンドリーに接したかと思えば、「ほーう岸和田からか。ほうかほうか。そりゃそうとよ、今の言い方何なん?誰んトコでそないなナリしてナメた口たたいとんじゃコラ!岸和田言うたらビビるとでも思うとるんかボケ!!」とかわけのわからんことでキレて暴行する。

カツアゲの獲物となるちょっと不良っぽいヤンキー少年たちの方も小林たちほどの本物はなかなかいないから、「すんませんすんません!勘弁したって下さい!」とかすぐに泣きが入った。

また、その程度の中途半端な奴らを狙っていたのだろう。


さらに新入りの芳我はカツアゲだけでなく、さらってタコ部屋に売ればもっと金になると提案。

三重県のそんな業者に伝手があると胸を張った。

さっそくいいところを見せようとしたんだろうが、この極悪だが浅はかな目論見は大失敗に終わる。

9月23日、三人の男性をアジトの千日町の部屋に連れ込んだが、逃げられてしまい、おまけに警察に目をつけられてしまった。


おかげでせっかく手に入れたアジトを放棄せざるを得なくなり、川田に新しく大阪市中央区島之内二丁目にマンションを借りてもらい、そこを新たな拠点にする羽目になる。

そしてそのマンションの部屋、4階408号室に転居したのは9月27日。


翌日、その408号室で第一の凶行が行われることになる。

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