第6話 『暁』

夜明け前の長崎スタジアムシティ。福山雅治のライブがクライマックスを迎える中、香織は美咲の証言と映像を手に、事件の全貌を把握した。高橋直樹がこの一連の騒動の黒幕であることが明らかになり、香織と涼介は彼を追い詰めるべく行動を開始する。


「暁」が流れる中、香織は直樹の動きを察知し、涼介とともに彼の行方を追う。スタジアムの観客たちの興奮と歓声が響く中、香織の心臓は緊張と決意で高鳴っていた。


直樹は巧妙にスタジアムの通路を抜け、観客の群れを縫うようにして逃げようとする。香織と涼介はその背中を見失わないように必死で追いかける。スタジアムの複雑な構造を熟知している直樹は、幾度も巧みに道を変え、追跡を振り切ろうとするが、香織は冷静にその動きを読み取り続けた。


「涼介、こっちよ!」香織は直感を頼りに、直樹の逃走経路を予測しながら彼を追い詰める。直樹が裏手のメンテナンスエリアに入り込んだのを見て、香織と涼介はそれに続く。暗闇の中での追跡劇が、二人の探偵としての技量を試す場面となった。


直樹はメンテナンスエリアの機材や物品を利用して、逃走を妨害しようと試みる。棚を倒し、道を塞ぐ直樹に対し、香織は俊敏に身を翻しながら涼介と連携を取る。「もう逃げられないわよ、直樹!」と香織が叫びながら、直樹の背後に迫る。


「暁」がクライマックスに達する頃、香織と涼介はついに直樹を追い詰める。狭い通路の先に追い詰められた直樹は、観念したように振り返った。彼の顔には焦りと絶望の色が浮かんでいた。「これで終わりよ、直樹さん。チェックメイトです。」と香織は冷静に告げた。


直樹は一瞬の沈黙の後、自らの行動と動機を明かし始めた。彼の言葉には、かつての理想と現実との葛藤が滲んでいた。香織と涼介はその言葉を聞きながら、事件の全貌がようやく明らかになる瞬間を迎えていた。


「暁」の光がスタジアムを照らし始める中、香織は直樹の手を取り、事件の終焉を迎えた。彼女の心には、正義が勝利した喜びと、直樹の哀れな姿への複雑な感情が交錯していた。


「これで終わりにしよう…全てを、真実のために。」

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