第45話 水魚之交≪すいぎょのまじわり≫
ひなたちゃんの恋愛、美和ちゃんの浮気疑惑、そして真優ちゃんの留学挑戦、このハウスも三年目を迎えいろいろあったけど、なんとか全部収まるところに収まった。
もちろん結果オーライのところもあるけど、淳史が上手く立ち回ってくれたことも否定できない。
私と付き合い始めたころの淳史くんは、幼い一途さ以外は、女性のフェロモンが見えるという特殊能力のおかげでエッチが上手いだけの高校生。一回りの上の私が将来を託そうと思える相手ではなかった。
淳史くんと七年ぶりに再会したのは、付き合っていた彼と別れ、火事にも見舞われて心が弱っていた時だった。そして高校生の時と変わらぬ彼の一途さに導かれるままこのハウスに来た。
私に対して結束して猛烈に反発する女性三人をみて、私は彼女らとの対決姿勢を改め、仲間になる道を選んだ。
彼女らとここで一緒に暮らしてみたい。そして淳史くんがどう成長したか、見極めてみたい、そんな気持ちになったのだ。
相変わらず甘ったれではあるけど、淳史くんは予想以上に成長していた。
表面的には女性たちに管理されているようで、要所では彼の細やかな気配りが効いている。女性同士の仲の良さも、結局は淳史くんの影響力の大きさに寄るとこころが大きい。
そんな中で、私の妊娠・出産は、シェアハウスの存在を根幹から揺るがす毒饅頭だった。
いい男に成長した淳史くん、今の彼となら、奥さんになりたいと思える。けど、それ以上に、彼の、そして私のシェアハウスのことを大切にしたい。
妊娠した時、いや妊娠する前から、ハウスに対し最小限の影響ですむようにと、シングルマザーの道を選ぶことに、迷いはなかった。
半ば諦めかけていた自分の子ども、自分のDNAを受け継ぐ存在を、しかも淳史くんの子どもを持てた、それだけで私はこれからの人生をやっていける。それ以上のものを望んで、美和ちゃんたちを不幸に、このハウスを駄目にしたくない。
淳史や、ハウスの女性メンバーに葛藤はあったみたいだけど、結局私の決断は受け入れられた。
遊人≪ゆうと≫は1歳になった。私も間もなく心療内科医として復職の予定だ。
もちろん淳史くんとの営みにも復帰済み、ちゃんとシフトに入れてもらっている。
「今日は遥さんの日でしょ。遊人くん預かってあげる」とひなたちゃん。
「子どものことは保育士の私に任せて、思う存分楽しんでね」
私は彼女のことばに甘えることにした。
アダルト通販で、真優ちゃんお勧めのオープンクロッチ、股のところに穴の開いているランジェリーを取り寄せてみた。なんでもこれを着ると淳史くんが興奮するんだそうで、年甲斐もなくそれを身に着け、淳史くんを待っているところだ。
「遥さん、入っていい?」
淳史くん、喜んでくれるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます