第47話 大驚失色≪たいきょうしっしょく≫

 かのんちゃんも美和さんも淳史さんも、この三人の関係、なんだかおかしい。いや、このシェアハウス自体が、微妙に怪しい。

 

 夕食は美和さんの手作り料理を五人でいただいた。

 本来であればライバル関係みたくなってもおかしくない美和さんに、かのんちゃんはべったりだ。美和さんもかのんちゃんをすごく甘やかしているみたい。


「あ、そのサラダのプチトマト、美味しそう。ねえさま、かのん、それ食べたい」

 プチトマトを咥えた美和さんがかのんちゃんに顔を近づけ、かのんちゃんも自然なしぐさで顔を傾ける。

「んっ」

 プチトマトを口移しにした!

 

 さて、いよいよお泊りの準備だ。

 このシェアハウスに私たちが泊まれる部屋なんてあるのかなと思ったら、管理人室は隣のマンションにあるんだそうだ。私たちは美和さんとかのんちゃんと四人でそちらに移動した。

 2LDKのマンションは、失礼ながらシェアハウスとは全然違って、とてもきれいで快適だった。

 

 私たち四人は、お菓子を食べながらガールズトークに花を咲かせた。


 「それでね、私がちゃんと敦ちゃんと話をしなきゃって決死の覚悟で帰ってみたら、彼ったら、酔っぱらってひなたちゃんとアニメソングをデュエットしてたんだよ。私、バカみたいじゃない!」

 話題がここにはいない淳史さんの話になると、二人して彼の悪口を言うのだが、結局それはのろけ話で、なんか「あーあ」って感じ。


「ところで美和さん、かのんちゃん。今日は、その、淳史さんは、あっちのハウスで一人なんだよね」

「ああ、今日は遥さんの日だから」と美和さん。

 え、遥さんって、あの子持ちの人だよね。遥さんの日ってどういうこと?


 そろそろお風呂に入ろうということになった。

 まず最初に私と小夜ちゃんがお風呂をいただいてパジャマに着替え、その後美和さんとかのんちゃんが二人で浴室に向かった。

 

 その隙に、私は小夜ちゃんとこのハウスについてひそひそ話をした。

「彩夏ちゃん、このハウスにいたら、かのんちゃん、おかしくなっちゃうよ」

 小夜ちゃんも私と同感だった。

 いや、もうすでに少しおかしくなり始めていると私は思った。


 その時、なんとお風呂から上がった二人が、全裸のまま、前も隠さずに部屋に戻って来た。

 少女から大人になりかけのかのんちゃんの身体は、同性の私から見ても本当にびっくりするくらいきれい。美和さんも、スレンダーだけど出るところは出て、大人の女って感じで、二人並ぶとまるで一枚の絵画のようだ。


 って、それはそれとして、すっぽんぽんでリビングに入ってくるなんて、絶対に変! 

私はびっくりして叫んでしまった。

「かのんちゃん、美和さん、その、ええっ」

 

「いつもの癖で、つい」と美和さん。

「え、女同士なんだから、別にいいじゃない」と、何言ってんのって感じのかのんちゃん。


 少しおかしくなり始めているなんてもんじゃない、かのんちゃん、もうかなりおかしくなっちゃっている。

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