第43話 留学挑戦
「人事部としても、そろそろ女性の合格者を出したいと思っているはずだよ。金子さん、あなたなら可能性は十分ある。どうだい、挑戦してみないか」
私、金子真優は、上司から社内留学生制度に応募してみないかと勧められた。
行先はアメリカ、期間は二年。現地の大学に一年間、その後一年間は当社のロサンゼルス支店で海外研修員として働くことになる。
元より海外は是非経験してみたいと思っていた。費用会社持ちで一年間向こうの大学で学べるのであれば願ったり叶ったりだ。
「やってみます。よろしくお願いします」
一次試験は英語と論文、これである程度人数を絞り、二次の役員面接で合否が決定する。
「お、何? 勉強中」
試験対策に英語の勉強していると、淳史が部屋に入ってきた。今夜の淳史は私の番の日だった。
淳史に、社内留学生試験を受けることを報告した。
「受かると何年日本を留守にするの?」と淳史
とりあえず二年はアメリカ、でもその後の勤務地が東京であるかどうかは分からない。
変則的ではあるが淳史とは彼氏彼女、お互いにとって簡単に「はい、そうですか」という問題ではない。それでも淳史は、私の説明を聞いて理解を示し、「頑張れ」と背中も押してくれた。
「それで、今夜はどうする?」
「ちょうど勉強を終わりにしようかと思っていたところ。しようよ」
でも、今淳史に抱かれちゃうと、頭の中が真っ白になって、せっかく覚えたことを忘れてしまいそうだ。
「ねえ、淳史、今夜は私が口でしてあげる」
「出しちゃってもいい?」
「うん、全部飲んであげる」
一次試験が終わった。
受験者は私を含め五名。私ともう一人、一年後輩の男性の二名が最終の役員面接に進むことになった。
「よく、頑張ったね」
早速、受験を勧めてくれた課長に報告した。
「ところで、金子さんには、その、今、付き合っている男性とかはいるのかな」
「いますけど」
「こんなこと言うと、セクハラと言われるかもしれないけど」
彼はいるのか、いるなら海外留学することを理解してくれているのか、そう言った質問が役員から出る可能性があるので、答えを準備しておくように、そうアドバイスされた。
元より、それが私にとって最大の問題だった。
淳史と遥さんとの間には遊人くんがいる。彼が二人をおろそかにするころは絶対にないだろう。
さらに美和ちんがいる。
まさに「雨降って地固まる」で、浮気騒動の後、前にもまして美和ちんは彼にぞっこん、ラブラブ状態だ。
遥さんと美和ちん、自分が淳史にとってのこの二人以上の存在になれる可能性はないだろう。自分自身の将来を考えると、今が潮時かなと思う。
もし試験に受かったら、彼と別れ、ハーレムからも巣立つんだ。私はそう心に決めた。
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