第31話 奇策発動
ハウスに隣接したマンションにかのんちゃんが引っ越してきた。
学校のこともあり、なかなか常駐というわけにはいかなかったが、それでもかのんちゃんは週末になるとやってきて、ハウスで私たちと過ごすようになった。
住まいは別棟のマンションなので、彼女が自室に帰ってしまえば問題はないのだが、かのんちゃんは、しばしば私の部屋に泊まりに来るようになった。
声が筒抜けになる我がハウスである。彼女がお泊りに部屋を訪ねてきた時は、敦ちゃんとの愛の行為は原則自粛とお願いした。
さりとて始めてしまって一度熱くなった身体は、なかなか止めることができない。 さすれば声を出さずにということになるのだが、これまた淳史がお相手では、女性には酷な注文である。
この日も、隣室では、折悪しく真優ちゃんが愛の営みを開始したところ、嬌声を必死にこらえようとするくぐもった彼女の声が、それでもはっきりと聞こえてきた。
「ねえさま、苦しそうな唸り声みたいなのが聞こえるんだけど?」
「自殺した人の地縛霊かしらね」
「ここで自殺者なんて出てませんけど!」
それならポルターガイストかしらね、とか、適当な言葉を連ねて、確かめに行こうとするかのんちゃんをかろうじて押しとどめた。
不完全燃焼のフラストレーションを抱えた真優ちゃんが全員に召集をかけ、かのんちゃんのお泊りについての対策会議が行われた。
「土曜日一日のことだし、シフトから外して休養日にする?」と提案してみたが、
「せっかくの週末に何で?」「これ以上回数が減らされるのいや」と他の女性三名に一蹴されてしまった。本音を言えば、私もイヤである。
その時、敦ちゃんがとんでもない提案をした。
「いっそ全部見せちゃわない?」
「そんなことしたら、私たちみんな害虫扱いされて、追い出されちゃうんじゃない?」と真優。
「彼女は実際の行為がどんなものか知らない。こんなこととても自分にできないと分かれば、納得して黙認してくれるんじゃないかな」
「そんなことが社長に伝わったらもっとやばくない?」
「由美子さんにはざっくり説明しておくよ」
どんな説明をするつもりなんだ?
「となると、かのんちゃんが、とても自分には無理と思えるような、凄いのを見せられるかどうかね。で、誰がそれをやってみせるの?」と遥さん。
「私がやるわ」
私は彼女のねえさまだもの、この役目ばかりは他の人に任せるわけにはいかない。
その週末、かのんちゃんが私の部屋にお泊りに来た時に、手はず通り敦ちゃんが部屋にやってきた。
「俺も仲間に入れてもらってもいい?」
ベッドに入ると、敦ちゃんと談笑するかのんちゃんを横目に。私はパジャマと下着を脱いだ。
「ん、ねえさま? 裸になったりして、何をしているの?」
「かのんちゃんが淳ちゃんのことを好きなように、私も彼が好き。大人の女が好きな人と何をするのか、今夜、かのんちゃんに見てもらいたいの」
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