第25話 恋愛相談
私、金子ひなたは、短大の保育学科で保育士の資格を取り、新人の保育士として東京・杉並区の保育園で働いている。
勤務先は大きな幼稚園に併設された保育園で、学校法人全体の理事長の跡取り息子の八神広志先生が保育園の園長先生だ。
この御曹司の広志先生、福山雅治似のイケメンで、保育園の私以外のすべての女性が、彼を狙っているといって過言ではない。
独身女性は玉の輿に乗ろうと彼の気を引き、孫のいるおばさま保育士まで一夜のアバンチュールを期待して秋波≪しゅうは≫を送る始末だ。
女癖は少々難あり、自分がモテるのをよいことに、何人かの保育士さんが彼に食べられてしまっているようだ。でも彼を非難する行動に出ると女性全員を敵に回すことになるので、結局表ざたにもできず泣き寝入りということなるらしい。
ある日、私の教育係の浦田郁美先生に相談を持ち掛けられた。
浦田先生は、私たちのクラスのリーダーで、ダイナマイトなボディの持ち主である。その外見に似合わず、性格は控えめで服装は質素、仕事も堅実で後輩の面倒見も良いので、私は尊敬と親しみを込めて、郁美パイセンと呼んでいる。
「金子先生は彼と同居しているから、園長先生には全く興味がないのよね」
「はい、全くありません。やはり、園長先生に食べられちゃったというか、そっちの方の相談ですか」
そりゃそうだ。パイセンが私に仕事や人生の相談をするはずがない。
「広志先生に私の初めてをあげたのに、それ以降、お誘いがないどころか、明らかに私を避けているようなんです」
「一発目の後、彼になんて言ったんですか」
「結婚を前提にお付き合いいただけるんですよね、と言いました」
原因は間違いなくそれだ。
「一発やったくらいでいちいち結婚してたら、世の中結婚式だらけになっちゃいますよ。それで、郁美パイセンは、ピロシのやつとどうなりたいんですか」
「結婚を前提にしたお付き合いがしたいです」
私は、淳史先生にこの件を相談した。
「同じモテ男として、うちの園長先生を攻略する方法、何かアイディアはありませんか」
「お父さんの理事長に『あなたの孫がお腹にいます』とか言えば、なんとかなるんじゃない?」
「避けられて会ってももらえてないんですよ。妊娠とかハードル高すぎやしませんか」
「昔、ひなたたちが俺に仕掛けたやつならいけるんじゃない?」
「大失敗した入れ替わり大作戦ですか! あれ、思い出すのも恥ずかしいんですけど…」
私は、淳史先生と、作戦を細部までじっくりと練り上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます