第19話 温泉騒動

 私、金子真優≪かねこまゆ≫は、いとこの保育士・金子ひなたと男を共有し、ここ西荻窪の古い一軒家で共同生活をしている。

 この男、二子神淳史≪にこがみあつし≫は、ルックスが良い上にやたらとセックスがうまく、私たち以外にも、幼馴染の山上美和、一回り年上の女医の冴島遥≪さえじまはるか≫を連れ込み、同じ屋根の下で、女性4名が一人の男をシェアしながらシェアハウス生活をしている。

 

 TVのバラエティで温泉特番を観たひなたが、「温泉行きたい!」と言い出し、皆で温泉に行こうということになった。


 ようやく秋の気配が感じられるようになった9月中旬の週末、私たちは淳史が手配したワンボックスのレンタカーで、群馬県にある温泉に出発した。

 

 混浴の大浴場がある宿泊施設が見つからず、宿に着く前に日帰りの温泉施設に立ち寄ることとなった。

 訪れた混浴温泉は、女性のみ浴衣着用が義務付けられていた。

 最近おっぱいとおしりが垂れてきたことを気にしている遥さんは、浴衣着用と聞いてほっとした様子、美和ちんも「淳≪あっ≫ちゃん以外の男に裸は見せるなどとんでもない」というスタンスだ。

 一方で「美乳で悩殺しようと思ったのに」と、ひなたはちょっと残念そうだ。


 女性四人で、室内の洗い場から露天風呂に出ると、20名ほどが広めの湯船に浸かっていた。若者は女性三名のグループと、二十代と思しき男性が二人、やはりおじさんおばさん比率が高い。

 

 きゃいきゃいと騒ぎながら私たちも湯船に向かうと、早速男性陣の視線が集まった。若者二人が近づいてきたその時、淳史がおーいと手を振りながらこちらに向かってきた。

 180センチを超す長身に引き締まったボディ、タオルは肩にかけたままで、股間の立派なものを隠そうともしない。

 男性は彼を見るやそそくさと去っていった。

 

 おばさん陣の目は淳史に釘付けとなり、女性三人組は、やはり淳史を指さしながら何かを言い合っている。

 虫がついてなるものかと湯船につかる淳史を四人で囲んだ。両手に二輪ずつの花の淳史はご満悦の様子だったが、やがて顔から笑みが消え、「やばい」と小声でつぶやいた。

 どうやら勃起してしまったようだ。

 

 いくら混浴とはいえこれはまずい。淳史のものはタオル一枚では隠しようがない、このまま立ち上がったら騒動になることは必須だ。


 すぐさま私と美和ちんとひなちゃんは彼から距離を取った。

 遥さんが、心療内科医らしく、「深呼吸して、頭を空にして」と事態の収拾に当たっているが、彼のものはなかなか静まる気配をみせない。

 

 やがてのぼせそうになってきた淳史に、姐御肌の遥さんが大胆な行動に出た。自らの浴衣を脱ぎ、彼の腰に巻いて湯船から立たせたのだ。


 これはこれで別の意味の騒動になり、やがて係りの人がやって来た。

「家族風呂がありますので、そちらを使っていただけますか」

 

 私たちは、隔離されてしまった。

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