第17話 全面対決

 いきなり淳史くんが私の目の間に現れて、私は未だに彼を欲しているのだということに気づかされた。


 一回りも年上のおばさんが、しかも自らあんな別れ方をしたくせにと、最初は彼を頼らない決心をしたものの、それは一晩しか持たず、私は我慢できずに彼と連絡を取ってしまった。

 そして彼だけが知る私の官能のスイッチを押され、もうそんなことはどうでもいいと思ってしまった。


 七年ぶりだったのに、私の身体は、まるで淳史くんの身体の形状を覚えていたかのように、それをぴったりと、奥まで受け入れた。


 彼によってリミッターが外された私の身体は、長かった空白の日々の埋め合わせをするかのように、淳史くんの身体を求めた。それは相性がいいとか、そんな生易しいものではなかった。

 昨晩の私は、一頭の獣だった。私の頭の中の人が人になる前の獣の部分が、本能をむき出しにして彼を求めた、そんな感じだった。

  

 その彼は、今、私の隣で、健やかな寝息を立てている。

 今、この彼の何億匹もの分身が、私の子宮の中の女王様目指して殺到しているのだと思うと、なんかうれしい。


「赤ちゃん、できたらいいな」

 私は、私のお腹をそっと撫でた。

 

  

 一夜が明けると、淳史くんは、今、三人の彼女とシェアハウスで暮らしていることを告白した。

 

 よくもまあ、そんな状況で私にプロポーズができたものだと、怒りを通り越して、私はただただ呆れてしまった。けど、昨晩の彼の衝動的な行動を考えると、さもありなん、淳史くんらしいという気もした。

 

 当然三人は彼との生活に満ち足りているはずで、これは一筋縄ではいくはずもない。

 しかし、せっかく手に入れられそうな妻の座だ。そう簡単に諦めるわけにはいかない。 


 まずは敵の情報を集めることだ。


「この際、洗いざらい全部吐いてもらうわよ」

 私は三人の彼女の性格や人物像、家庭環境やなれそめ、シェハウスを持つに至った経緯など、彼から徹底的な事情聴取を行った。

 

 情報を取りつくすと、私にプロポーズをしたことを三人に説明するように言い聞かせ、彼を彼女らの元に帰した。

 さて、これで三人がどう動くか、後は敵の出方を待つだけだ。


 これは女の、いや、一頭の雄を争う雌同士の勝負だ。

 私は自分の頬をぴしゃっと叩いて気合を入れた。


 

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